研究課題/領域番号 |
15K19187
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
出居 真由美 順天堂大学, 医学部, 助教 (40596623)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 腹膜傷害 |
研究実績の概要 |
腹膜透析の致死的な合併症である被嚢性腹膜硬化症は、現在有効な治療法がなく、その回避には腹膜劣化の早期発見が重要である。しかし、腹膜劣化の鋭敏な指標がなく、簡便かつ正確で再現性の高い検査法の確立が重要な課題となっている。現在使用されている日常的な検査項目では、腹膜透析排液中の膵リパーゼが腹膜劣化のよい予測因子となることが示され、論文を受理された。ERC/mesothelinは腹膜や胸膜などを覆う中皮細胞に限局して発現しているため、腹膜劣化の新規指標となる可能性がある。ERC/mesothelinはfrin様プロテアーゼで切断された後、N末端の分泌型N-ERC/mesothelin(N-ERC)と膜に結合したC-ERC/mesothelin(C-ERC)に分かれる。腹膜透析排液中のERC/mesothelinの検討においては、平成27年度の結果をもとにさらにサンプル数を増やし、腹膜透析排液中のERC/mesothelinと腹膜機能の関係を検証した結果、腹膜透析排液中のERC/mesothelinは腹膜機能と正相関を示した(N-ERC:r=0.69, p<0.001, C-ERC:r=0.62, p<0.001)。腹膜劣化に関与するとされる指標との関係については、腹膜透析排液中のERC/mesothelinは腹膜透析排液中のIL-6およびVEGFと正相関を示した。また、腹膜劣化を目的変数とした多変量解析において、年齢、透析期間、GFRで調整後も腹膜透析排液中のERC/mesothelinは有意な予測因子であった。これらの結果より、腹膜透析排液中のERC/mesothelinは腹膜劣化指標となることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度の計画は、平成27年度に得られた結果をもとに、サンプル数をさらに増やし、腹膜透析排液中のERC/mesothelinの腹膜劣化指標としての有用性および腹膜劣化の予測能の評価を行うことであった。サンプル数を増やし解析した結果、腹膜透析排液中のERC/mesothelinは腹膜機能と正相関を示し、腹膜劣化を目的変数とした多変量解析においても、有意な予測因子であることが明らかとなり、腹膜劣化指標となることが示された。腹膜劣化指標としての有用性の検討においては、当初比較する予定であった腹膜劣化に関与するとされる腹膜透析排液中のTGF-βやTNF-αについて定量的なデータが得られず、腹膜透析排液中のERC/mesothelinとの比較が困難であったため、新たにPAI-1等の他の腹膜劣化に関与するとされる指標を用いての検討が必要となった。このため、平成28年度の計画はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成27年度および平成28年度に得られた結果をもとに、サンプル数をさらに増やし、腹膜透析排液中のERC/mesothelinの腹膜劣化指標としての有用性および腹膜劣化の予測能の評価を行う予定である。腹膜透析排液中のERC/mesothelinの腹膜劣化指標としての有用性については,新たにPAI-1等の腹膜劣化に関与するとされる指標との比較を含め統計学的に検証を行う。さらに、得られた結果を取りまとめ、研究成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
腹膜透析排液中のERC/mesothelinと比較予定であった腹膜劣化に関与するとされる腹膜透析排液中のTGF-βやTNF-αについて定量的なデータが得られなかったため、サンプル数が予定よりも少ない段階で測定を中止とした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の未使用額分は、研究遂行のために必要な、抗体等の試薬・検査消耗品、検査委託費、および学会発表や論文投稿に係る費用に使用する予定である。
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