水害被災地における浸水一戸建および応急仮設住宅の室内真菌叢で主要なカビとなっていたAspergillus restrictusおよびEurotium amstelodamiについて、一般的に企業への血中特異的IgE濃度受託検査では測定できないことから、石巻市に居住する被災一戸建、応急仮設住宅および県営復興住宅の居住者約400名の血清について、本研究において昨年度開発した化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)による両菌種特異的IgE濃度の測定を試みた。比較対象として、真菌アレルギー分野において、最も主要なアレルゲンとして認識されているAspergillus fumigatusに対する特異的IgE濃度も合わせて測定を行った。Aspergillus restrictus、Eurotium amstelodamiおよびAspergillus fumigatusの培養液または菌体から、アレルゲンタンパクの粗抽出液を作製し、抗原として用いた。 その結果、特異的IgE陽性率は、対象者のうち7%~20%を占め、Aspergillus restrictusが最も高く、Aspergillus fumigatusが最も低い結果となった。被災地住宅ではAspergillus fumigatusの検出頻度および濃度は高くなく、検出されない家も多くあることから、特異的IgE陽性率は、実際の住宅からのカビの検出頻度および濃度と一致する傾向にあることが示された。
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