研究課題/領域番号 |
15K19193
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
加茂 敦子 東海大学, 健康科学部, 講師 (50614088)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 痒み / ドライスキン / ケラチノサイト / 浸透圧 / ホメオスタシス |
研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎など難治性の痒みには抗ヒスタミン薬が奏功しない。このことから、難治性痒みの発生機序にはヒスタミン以外の起痒因子の関与が考えられる。またこのような難治性痒みが認められる疾患には共通して皮膚の乾燥(ドライスキン)が認められる。 生体の内部環境を規定する因子には、酸塩基平衡(pH)、体温、浸透圧などがあり、これらの破綻は生命を脅かす様々な疾患の引き金となる。近年、皮膚のpH、体温の変動と難治性痒みとの関連が研究され、これらが痒みの発生機序に関与することが示唆される。ドライスキンでは、皮膚バリアの脆弱化、もしくは破綻に起因し、体の内部と外部の水分移動を容易にすることから、表皮内浸透圧環境の変動を誘導すると考えられる。しかしながら、これまで浸透圧に着目した報告はない。昨年度、申請者はアセトン・ジエチルエーテル混合溶液(AE)による皮膚バリア破壊と水処理(W)の反復によって作製したAEWドライスキンモデルマウスの皮膚を解析し、その表皮において浸透圧が変動している可能性を捉えた。この成果を踏まえ、本年度は培養ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)を用いて、表皮内浸透圧刺激による遺伝子発現変動を解析した。その結果、低浸透圧または高浸透圧の刺激で変動することが知られている遺伝子発現が、NHEKにおいても変動することが明らかとなった。同様に、痒み関連遺伝子の発現も変動した。このことから皮膚バリア破壊による表皮内浸透圧環境の変動が痒み刺激となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
浸透圧調整培地を用いた実験において、網羅的な発現解析が完了しておらず、阻害剤等を用いた遺伝子発現解析に到達していない。
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今後の研究の推進方策 |
網羅的な発現解析を完了し、阻害剤を用いた遺伝子発現解析を行う。また、培養細胞を用いて浸透圧調整培地が皮膚バリア機能に与える影響を検討する。終了後、動物モデルを用いた掻破行動に対する浸透圧刺激阻害の影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は申請者の異動計画が生じ、それに伴い研究補助人員の雇用計画が進まなかった。また、研究進捗にも遅れがあり繰越金額が生じた。 次年度は、より効率的な実験方法や解析方法を検討する。培養ヒト表皮角化細胞を用いた解析を進めるために細胞培養関連費が多く必要となる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度交付申請額900千円と繰越金額145,512円(総額1,045,512円)の使用計画は以下の通りである。設備備品費:450千円、消耗品費:500千円、人件費・謝金:50千円
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