研究課題/領域番号 |
15K19194
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
高橋 由香里 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (20613764)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ノルアドレナリン / 痛み / 侵害受容性扁桃体 / シナプス可塑性 |
研究実績の概要 |
チャネルロドプシンによる光誘発内因性ノルアドレナリン放出誘導、および、内因性ノルアドレナリン放出下の侵害受容性扁桃体シナプス伝達への影響の解析を目指し研究を進めた。包括型脳科学研究推進支援ネットワークリソース・技術支援より、ノルアドレナリン合成酵素ドパミンβヒドロキシラーゼ(DBH)プロモーター制御下にCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックラット(以下、DBH-Creラット)F0世代9匹を非営利的に譲受した。DBH-Creラットを野生型Wistarラットと交配し、今後本研究に用いる次世代個体を獲得した。Cre依存的赤色蛍光タンパク発現系保有ラット(東北大学八尾寛博士より譲受)とDBH-Creラットを交配し、ノルアドレナリン神経が赤色蛍光陽性となる動物を作製し、脳内の赤色蛍光タンパクの発現量・発現部位の確認、および、赤色蛍光タンパクと免疫染色によるDBH陽性像との比較を行い、Creの発現を評価した。DBH-Creラット9系統中、3系統で主要ノルアドレナリン神経核(青斑核、孤束核等)でのCre依存的に赤色蛍光タンパクが発現している事実を確認した。系統により赤色蛍光タンパク発現細胞数が異なったが、発現細胞の分布には系統間での著しい違いは認められなかった。一方、ノルアドレナリン神経終末の赤色蛍光は蛍光顕微鏡下での検出が困難な強度の発現レベルであった。現在Cre依存的チャネルロドプシン発現系保有ウイルスベクターのDBH-Creラットノルアドレナリン神経核への微量投与、および、Cre依存的チャネルロドプシン発現系保有ラットとDBH-Creラットの交配を計画・推進中で、これらの系でのチャネルロドプシンの十分な発現の後、形態学的および電気生理学的解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DBH-Creラットの系統維持・系統選別に計画立案時に予想していたよりも時間と労力がかかったため、平成27年度に計画した光による内因性ノルアドレナリン放出誘導の系の確立が達成されていない。現時点で3系統のDBH-Creラットを確立することができたため、次年度には本動物を用いた実験系を円滑に運用することが可能な環境が整った。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に確立したノルアドレナリン神経特異的Creリコンビナーゼ発現ラット(DBH-Creラット)に対し、現在ウイルスベクターによるチャネルロドプシンの発現を誘導している。チャネルロドプシンの発現量については、ウイルスベクターの種類やタイターの検討を行いながら発現系の機能の向上を進める。また、Perairaらの報告(Nature Neurosci. 2016)からシナプスでのモノアミン放出確率が非常に低い可能性が示唆されているため、光刺激パターンや刺激時間・回数等の条件検討を検討する。Cre依存的赤色蛍光タンパク発現系による検討結果から扁桃体の神経終末でのチャネルロドプシンの発現が神経伝達物質放出誘導に不十分である可能性が示唆される。その場合は、Cre発現系保有ウイルスベクターとCre依存的チャネルロドプシン発現系保有ウイルスベクターを組み合わせて改善を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に研究遂行に必要なトランスジェニック動物の系統選別・確立のために研究計画立案時の予定以上の費用がかかったため、前倒し支払請求を行った。必要金額を試算し前倒し支払請求を行ったが、前倒し支払請求した分を平成27年度に全て使い切らなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究推進に必要な消耗品の購入費やトランスジェニック動物の飼育費として使用する。
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