本研究の目的は、磁気共鳴法によるマルチモーダル非侵襲脳機能計測を用いて、鍼治療効果の個人差に関連する定常的脳活動を解析することである。鍼治療による鎮痛効果には個人差があることが知られており、個人差の要因を明らかにすることは鍼治療の臨床効果を高める上で、非常に重要な課題である。本年度は、昨年度報告した有毛部への触覚刺激に伴う脳活動の個人差に関連する感覚感受性を調べるためアンケートを実施した。また、腰痛症状を感じる被験者の例数追加を行った。さらに、鍼刺激の刺激特性を調べるため、健常被験者に対して皮下に刺入した鍼を撚ることで刺激を加える手技(撚鍼)に伴う経時的な脳活動変化を従来よりも時間分解能を高めて測定を行った。その結果、15秒間の撚鍼に伴う脳活動は、同じく15秒間手掌部をスポンジによる擦過刺激が刺激中のみ脳活動の上昇が観察されたのに比べ、刺激中の他に刺激終了後にも脳活動の上昇が観察される領域が確認された。
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