研究課題/領域番号 |
15K19197
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
高山 靖規 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特任助教 (60711033)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | TRPV1 / アノクタミン1 / 疼痛 |
研究実績の概要 |
カルシウム透過性カチオンチャネルであるTRPチャネルと細胞内のカルシウム濃度上昇によって活性化するクロライドチャネルであるアノクタミン1(ANO1)は相互作用の関係にあり、TRPチャネルの活性化に伴ってANO1も活性化する。本研究においては、灼熱痛に関わるカプサイシン受容体型イオンチャネル、TRPV1とANO1の関係についてその生理的意義を検討した。TRPV1とANO1が一次感覚神経において共発現することはすでに知られていたので、疼痛に関わると考えて検討を進めた結果、以下のことが明らかとなった。 1)TRPV1活性化に伴って細胞内へ流入するカルシウムはANO1を活性化させる、2)TRPV1とANO1はタンパクータンパク結合をする、3)感覚神経におけるTRPV1とANO1の相互作用によってカプサイシン投与による活動電位発生が亢進する、4)マウスにおいてカプサイシン投与によって引き起こされる痛み関連行動はANO1選択的阻害剤の同時投与により減弱する。 これらの結果から、TRPV1とANO1の相互作用は疼痛を増強する分子メカニズムとなっていることが判明した。これまではカプサイシンの痛みにはTRPV1のみが関わると考えられていたが、それに加えてANO1もその疼痛に関わることが示された。また、本研究はANO1を鎮痛薬開発のターゲットとすることの重要性も示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していたTRPV1とANO1の相互作用については計画通り研究をまとめることができた。当初の予定よりもやや早く進んだため、2年目に計画していたTRPA1-ANO1相互作用についても検討を開始している。HEK293T細胞においてTRPA1活性化に伴うANO1電流の解析を行ったところ、相互作用を示す明確な電流増大を観察した。このことから、TRPA1もTRPV1と同じようにANO1と感覚神経において共発現していればTRPA1関連疼痛についてもANO1による増強メカニズムが存在することとなり、TRPA1関連疼痛の緩和にANO1阻害が重要であることが示されるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、計画通りTRPA1とANO1の相互作用についてその生理的意義も含めて検討を進める。HEK293T細胞における機能的相互作用はすでに観察しているので、生化学的手法によりタンパクータンパク間結合を検討する。すでに抗TRPA1抗体を用いて免疫沈降実験を試みたが、現存の抗体ではTRPA1の検出が難しかったため、今後はGFPタグなどを用いたプルダウンアッセイにより物理的相互作用の有無を検討する予定である。また現在、蛍光2重in situハイブリダイゼーションの実験系を立ち上げておりTRPA1-ANO1の共発現をマウス後根神経節において検討する。また、マウスにおいて電気生理学的、行動薬理学的にTRPA1-ANO1相互作用の有無と生理的意義について解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定よりも使用動物数や検体検査の外部発注の件数が少なくなったことによって生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度も引き続き、動物実験および外部発注による分子の網羅的探索などを行うので差額分はそれらの経費に充てる予定である。
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