研究課題
マウスの一次感覚神経において、TRPV1とアノクタミン1の相互作用により疼痛感覚が増幅される新規メカニズムを解明した。また、アノクタミン1の阻害がTRPV1関連疼痛を抑える有効な手段であることを明らかとした。これらのことから、TRPV1と同じように一次感覚神経に発現するTRPA1もアノクタミン1と相互作用することにより疼痛を増幅していると推察していた。事実、HEK293T細胞においてTRPA1とアノクタミン1が機能的に相互作用することを見出していた。しかしながら、マウスを用いた行動薬理学的検討において、TRPA1アゴニストであるアリルイソチオシアネートにより引き起こされた疼痛関連行動(足舐め行動)はアノクタミン1の選択的阻害薬であるT16Ainh-A01の同時投与によって減弱しなかった。このことから、単一細胞においてTRPA1とアノクタミン1が共発現していたとしても個体レベルではそれぞれ独立して急性疼痛に関わっていることが示唆された。すなわち、アノクタミン1阻害はTRPV1関連疼痛を抑えることに重要であると考えられる。以上のことから、本研究課題であったTRPチャネルとアノクタミン1の相互作用を介した疼痛メカニズムの検討において、TRPV1ーアノクタミン1相互作用に基づく急性疼痛の分子機構が解明された。また、本研究の過程においてTRPM8のアゴニストであるメントールがアノクタミン1を強く阻害することを発見した。さらに、メントール類似体の比較検討からメントールの一部を構成しているイソプロピルシクロヘキサンがアノクタミン1を阻害するのに重要な化学構造であることが判明した。これは、新たな創薬シーズの発見であり、鎮痛薬開発における今後の発展が期待される。
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