研究課題
本研究では磁気共鳴断層撮像装置(MRI装置)で取得した磁化率値を放射線治療計画の線量分布算出に応用することである.れまではComputed Tomography装置を用いて人体各部位を構成する構成元素や電子濃度といった情報を取得し,線量分布算出に使用してきた.近年,定量値である磁化率値がMRI画像から取得できるようになった.磁化率値から電子濃度を逆算することが可能となれば,MRI画像を元にした新たな線量分布算出法(MRI-based RTP)が可能となる.この技術が完成すれば,世界中で研究開発されている放射線治療装置MRI-Linacへの応用も期待されるのみでなく,被ばくを伴うことなく放射線治療計画の実施が可能となる.本研究ではこれまでに磁化率値を算出するアルゴリズム(定量的磁化率マッピング:QSM)の構築とQSMに必要となる各種パラメータの検討や脳組織の電子濃度と磁化率値の関係性を評価してきた.脳組織における電子濃度と磁化率値の関連については,特徴的な関係性を見出す事ができず,磁化率値のみを用いて直接電子濃度へ変換することは困難であることが判明した.磁化率値は分子ごとに異なる値をもっていることから,磁化率分布の各ボクセルを占める主な分子の同定を行うことで電子濃度を取得できると考えていた.しかし,1ボクセルの大きさが比較的大きくボクセル内に多様な分子が混在してしまう点や磁化率値が鉄,カルシウムといった強磁性体の影響を強く受けてしまい,1つの組織に対して1つの磁化率値を示さなかったために,特徴的な関係性を発見できなかったと考える.これらの内容を論文にまとめ,学術雑誌に採択された.また,脳の磁化率分布を用いて白質,灰白質,脳脊髄液等の各部位に分類することが可能かどうかを閾値処理と人工知能を用いたsegmentationについても現在追加で検討している最中である.
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
International Journal of Medical Physics, Clinical Engineering and Radiation Oncology
巻: 06 ページ: 252~265
10.4236/ijmpcero.2017.63023