研究課題
診断用X線による医療被曝を実測するために,OSL線量計の基礎特性をシミュレーションを用いて評価した.その結果,商用のnanoDot検出器でもかなり良い特性が得られていることが判明したため,この検出器を用いて臨床データを取得するため準備を行い,一部の臨床データの取得を開始した.具体的には,小児単純撮影を受ける事例に対して,診療放射線技師が介助(撮影補助:患者の固定)を行うが,介助者に線量計を添付し,散乱X線による被ばくを測定している.この研究を適切に行うために,徳島大学病院臨床試験倫理審査委員会の承認を得た.詳細なデータは解析中であるが,介助者の被ばくは,胸部位置の防護衣外側で1μGy程度,防護衣内側では検出限界以下,手の甲で3μGy程度であることがわかった.これらの線量は,胸部X線撮影で患者が受ける線量の1/100程度であり,介助者による被ばくが非常に低いことが実証できた.さらに発展的な内容として,CT撮影に着目して,患者の被ばく線量を測定できるかどうかの予備検討を行った.科研費で購入した成人ファントムを用いて,100個程度の線量計を体表に添付し,臨床用のCT装置で正しく線量分布を測定できることを実証した.さらに,小児CT撮影に対しても,本手法が適用可能であるかを検討した.新生児ファントムを用いて,患者の体表に線量計を添付し,[1]被ばく線量を測定できることの実証および[2]医用画像(CT画像)への影響評価を行った.その結果,臨床で行われている条件において,正しく線量が測定できることを明らかにし,さらに医用画像に対しての影響はほとんどないことがわかった.本テーマに対しても,実臨床データを取る準備を行っている.
3: やや遅れている
線量計の設計を行うために,線量計の組成の調査やシミュレーション方法を開発してきたが,想像以上に時間がかかり,実際に試作するところはできていない.しかし,翌年度の研究期間満了までには実験データまで取得できる見通しを得ている.臨床データを取得するという点においては,現場の協力もあり,かなり進んでいる.この研究においては,商用の検出器を使う方が倫理審査委員会の承認を得られやすいということもあり,上記の検出器の開発と平行して,倫理審査を経て実臨床データの取得を行っている.発展的なテーマとして,CT撮影に関しても実臨床データを取得できる見通しを得ることができた.CT撮影においては成人のみならず,小児の被ばくが問題となっているため,小児に関する被ばく線量測定に着目して,実臨床データを取るための準備を行っている.全体として,検出器の開発に関する項目はやや不十分であるが,実臨床データの取得に関しては予想より進んでいる.やや厳し目の自己評価としたが,基礎的な実験データを充実させられる見通しも得ているため,このままのペースで,着実に成果に結び付けたいと考えている.
申請時には,角度依存性の無い検出器を開発することを目的の1つとしており,開発した検出器を用いて臨床データを取るという計画を立てていた.しかし,臨床データを取得するためには倫理審査委員会などの手続きが必要であり,この手続きにおいて,信頼性の高い商用の検出器を用いた方が適切であるとの指摘があったため,ひとまず商用の小型検出器を用いて臨床データを取得できるかどうかを検証している.この商用の検出器の特性が,開発しようとしていた角度依存性の少ない検出器と似ていることはシミュレーションにおいて確認しているが,実測データを取得していないため,今年度の研究において改めて基礎研究を行いたいと考えている.臨床データの取得においては,患者の線量を測定するのは多くの障壁があり,まだ実現していない.一方で,医療スタッフの線量測定に関しては,比較的行いやすい状況であるため,小児に対する介助者被ばくの測定というシチュエーションでの実測を行っている.この測定においても,開発を行っている線量計の良さを生かすことができ,世界的にも貴重な実臨床データを取得することができるはずである.
線量計の自作にかかる経費として計上していたが,一部のテーマが当初計画どおりに遂行されていないため,今年度の使用も見越して未使用とした.
線量計の作成費用(消耗品も含む)に使用する.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 10件)
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