研究課題
今年度は,OSL線量計の基礎特性の評価と臨床における患者や介助者の被ばく線量測定を行った.まず,基礎評価については,医療で使用される連続X線を用いたときと,単色X線を用いたときにOSL線量計の検出効率の違いに与える影響をシミュレーションおよび実測で評価した.その結果,診断領域の連続X線は,単色X線で線量校正した値を用いて,被ばく線量測定が可能であることが初めて明らかになった.この結果は,OSL線量計を用いて実際の医療現場での被ばく線量測定を行う際に,重要なエビデンスになる.つまり,医療現場でOSL線量計を着用して被ばく線量測定を行う際には,エネルギーが既知な直接X線だけでなく,エネルギーが未知な散乱X線が混入することに注意する必要があるが,この結果により,エネルギーが未知のX線場に線量計を持ち込んだ際にも,正しい線量を算出できることを意味している.この検討をさらに発展させることで,X線透視下での術者の水晶体線量を測定する際に,術者が着用するX線シールド(防護眼鏡)などでX線が減弱し,その実効エネルギーが変化したとしても,メーカーや研究者が個別に決めた線量の校正値を使用することができることも分かった.次に,OSL線量計を臨床現場に持ち込み,被爆線量測定を行った.具体的には,小児一般撮影における介助者への被ばく線量測定と小児CT検査における患者の線量測定を行った.小児一般撮影における線量測定では,介助者の受ける体幹部の線量は無視できるほど小さいという結果が得られたが,一方で患者を抑える手(手の甲)の被ばく線量は体患部に比べて大きいことが示された.またCT検査における被ばく線量測定では,初めての実臨床データが得られたことに意味がある.これらの測定技術を確立できたことは,今後,X線防護のための遮蔽体などの開発に生かすことができる.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 10件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Progress on Nuclear Science and Technology
巻: - ページ: -
Radiological Physics and Technology
巻: 10 ページ: 49-59
10.1007/s12194-016-0366-1
Medical Research Archives
巻: 5 ページ: 1-20
http://hayashi.w3.kanazawa-u.ac.jp/