研究課題
現在の放射線治療は、CTを用いた3次元治療計画により、複雑な形をもつターゲットに対しても、線量を局在して投与することが可能となった。とりわけ、強度変調放射線治療(IMRT)では、照射野を形作るマルチリーフコリメータ(MLC)の複雑な動きにより、高線量をターゲットに与えつつ、周囲の正常組織への線量を抑えることができる。しかし同時に、MLCの動きを含めた治療に関わる様々なパラメータが計画から逸脱すると、ターゲットへ十分な線量が投与されず、正常組織には制限を超えた線量が照射される恐れもはらんでいる。また、処方される線量のみならず、照射位置評価のために用いられるCTやリニアックに搭載されたコーンビームCTによる被ばく線量も含めた3次元での患者線量分布を評価することが、近年より重要とされてきている。本研究では、独自に開発された熱蛍光薄膜体(TLDシート)を用いて、被ばく線量も含めた患者線量分布の測定・評価を行うことを目的とした。まず、TLDシートに対して、低線量への感度の改善を行い、その基礎特性を評価した。その結果、1) 80 kVから6 MVのX線エネルギーに対してエネルギー依存性が非常に小さいこと、2) 上述のエネルギー領域において0.01 Gyから20 Gyの線量に対して、線量応答の直線関係が保たれることが明らかとなった。これらの結果から、CTやコーンビームCT、治療装置(リニアック)で用いられる幅広いエネルギー領域で、TLDシートによる測定が可能であることが示された。さらに、患者体内を模擬した不均質なファントムによる測定を通して、TLDシートが高い検出能力を保つことが明らかとなった。以上より、被ばく線量を含め、患者への投与線量を表面線量のin vivo測定の結果から導出できる可能性を示唆した。
黒河千恵: 電子線I-電子線の物理および計測-, 電子線II-電子線外部照射における治療計画-, JSMP医学物理サマーセミナー, 2017年黒河千恵: 教育講演5 放射線物理-電子線治療における物理. 日本放射線腫瘍学会第30回学術大会, 2017年
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Juntendo Medical Journal
巻: 63 ページ: 458-466
10.14789/jmj.63.458