研究課題/領域番号 |
15K19214
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
丹正 亮平 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 加速器工学部, 博士研究員(任常) (80735126)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 粒子線がん治療 / スキャニング照射装置 / リッジフィルタ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、スキャニング照射装置を使った粒子線がん治療において、高精細なビームを使用するために、従来とは異なるハニカム型周期構造を有したリッジフィルタを開発することである。ハニカム型リッジフィルタは六角柱を積み重ねたバーがハニカム状に2次元配置された構造をしている。リッジフィルタを通過したビームはそのエネルギー幅が拡がり、ブラッグピークの幅を広げることができる。前年度の研究では、ハニカム型のリッジフィルタを設計し、3Dプリンターを使用して実際に製作した。その後、照射試験を実施し、リッジフィルタ通過後の水中での深部線量分布を測定することで、製作精度を検証した。また、任意のビーム条件とリッジフィルタを使用したときの線量分布を検証できるよう、モンテカルロ計算を使ったシミュレーションツールを開発した。 本年度は前年度に開発したシミュレーションツールを使って、ビームの側方サイズとリッジフィルタに求められる製作精度の関係を調べた。これらの関係はこれまで不明であり、制作において要求される工作精度が不明確だった。研究の結果、RMS値で表されるビームサイズに対して、必要なバーの間隔はその2倍以下であることがわかった。この関係が明らかになったことで、工作精度の過度な要求を防ぎ、製作コストを抑制することができる。また、従来のリッジフィルタを使って同様の計算を実行すると、必要なバーの間隔はハニカム型リッジフィルタよりも小さくなり、ハニカム型リッジフィルタが工作精度の観点からより優位であることが示された。これらの結果を含めた成果は、投稿論文として発表された。 リッジフィルタは3Dプリンターで安価に製作できることが示されたが、出力できるサイズが小さく、バーの間隔も粗くなる問題があった。これらの問題を解決することが、今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた(1)ハニカム型リッジフィルタの製作、(2)照射試験、(3)側方ビームサイズとリッジフィルタの工作精度の明確化を達成することができ、これらの成果を投稿論文として発表することができたため、順調に進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
リッジフィルタの製作においては、3Dプリンタを使用することで安価に製作することができた。一方で、製作可能なサイズ、バーの間隔がある程度制限され、実用的なサイズのリッジフィルタを製作するためには不十分であった。これら製作精度の問題については、2つのRGFを上下に重ね合せ、1つ分のRGFを製作精度を落とすことで解決する方法を当初より考えていた。これにより、バーの間隔を粗く設計できる可能性があり、試行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
リッジフィルタの試作において、当初は経験のある業者に依頼し、機械工作によって製作するつもりだった。しかし、試作の段階においては3Dプリンターでも要求する工作精度を達成できることがわかり、そちらを利用することにした。それにより当初の試算よりも安価に製作ができ、予算の余剰が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
3Dプリンタによる製作では、製作可能なサイズ、バーの間隔がある程度制限され、実用的なサイズのリッジフィルタを製作するためには不十分であった。これら製作精度の問題については、2つのRGFを上下に重ね合せ、1つ分のRGFを製作精度を落とす案などを追加で考えている。主には、これらの案を実証するためのリッジフィルタの製作予算に当てるつもりである。
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