研究実績の概要 |
[目的] 本研究では、より高度な放射線治療の提供をめざし、患者の表面において蛍光板が陽子線により発光する際の発光強度分布を、安価な装置を用いて線量分布に変換し、オンラインで可視化する技術を開発した。開発手順は、①陽子線に対する蛍光板での発光事象の把握、②オンライン可視化システムの構築の順である。 [実験] 加速器から出射した陽子線(200 Mev, 1 nA)はウォブラー電磁石・散乱体・電離箱を通過し、蛍光板に到達する。蛍光板はビーム下流側の水等価ファントム表面に貼り合わせた。開発手順①では照射中の蛍光板の発光強度分布を取得するため、ビデオカメラを水等価ファントムのビーム下流側に設置した。また、別途2次元電離箱線量測定装置をビーム下流側の蛍光板表面に設置し、同様の方法で線量分布を取得した。開発手順②では、カメラで照射中の蛍光板を撮影し、指定した範囲の発光強度分布を取得するシステムおよび任意座標の線量を取得するシステムを開発した。 [結果・考察] 開発手順①では、陽子線照射による蛍光発光をビデオカメラで撮影したのち静止画に変換した。次に、Image-Jソフトウェアを用いて、1枚の静止画を用いてバックグラウンドの減算処理を行い、複数枚の画像の積算処理をして、発光中心部分のグレイスケール値を算出し発光強度分布を作成した。また発光強度分布および線量分布より発光強度と線量の関係を得るための検量線を作成した。この検量線を開発手順②のプログラムに組み込んだ。開発手順②では、ビデオカメラで撮影後、直ちに範囲を選択して画像処理を行うシステムを開発した。今年度は新たに下記の機能の追加を行い、システムを高精度化した。 ・画像の断面プロファイルにおいて、強度軸の単位を線量(Gy)にも切り替えられるようにすること。 ・画像の輝度の最大強度のピクセルを示す座標と輝度値を画面上に表示すること。
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