| 研究課題/領域番号 |
15K19217
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| 研究機関 | 北海道大学 |
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研究代表者 |
大森 亮介 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 助教 (10746952)
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| 研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| キーワード | 疫学 / HIV / 性行動 / ネットワーク / 数理モデル |
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| 研究実績の概要 |
性的接触ネットワークの数理モデルの構築と実データからの性的接触ネットワークの推定を行った。数理モデルの構築において、パートナーシップの結成と解消の過程を確率過程で描写した数理モデルを開発した。そして、開発した数理モデルを元にHIVの有病率が高く、かつ、上述の既知である３つのハイリスクグループ以外での流行が確認されているサブサハラアフリカ２５カ国のDemographic and Health Survey によって採取された去年一年間における婚姻関係以外の性交渉パートナーの数のデータからネットワークを最尤法により推定した。その結果、未婚男性におけるパートナー数は国内での分散が小さく、異なる国の間での分散が大きく、国レベルでの性行動の違いを反映していた。一方、女性、特に既婚女性では国内での個人レベルの平均分散ともに０に近く、性行動調査のデータは実際の性行動を反映されていない事が明らかになった。これは、性交渉パートナー数の分布は右側に大きく裾が広がっいる事に起因する。性交渉パートナー数上位１％が調査対象に含まれなかった場合、分散は０に近づいてしまう事が数理モデルにより明らかになった。これは性行動調査の正確さに問題があるというより寧ろ性行動調査により性的接触ネットワークを推定する事が困難である事が示唆された。また、実際に推定された性交渉パートナー数の国レベルでの平均、分散をもとに、国レベルでのHIVの流行レベルを推定し実際のHIV流行レベルと比較したところ相関がほぼ見られなかったことからも、性行動調査結果からHIVの流行を推定することは難しい事が明らかになった。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
性行動調査データの正確性の欠如は、本研究の様に定量的に示されることは少ないが、指摘されていたことであり、成果で得られた結果は予想範囲内である。
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| 今後の研究の推進方策 |
性行動調査データだけではHIVの流行レベルを推定できない事が昨年度までの成果で定量的に明らかになった。これを受けて、昨年度に開発した性的接触ネットワークの数理モデルとHIVの流行データをもとに、性的接触ネットワークの推定を行う。数理モデルにより推定されたネットワーク統計量をもとに、時々刻々と変動する性的接触ネットワーク上のHIVの流行シミュレーターを構築する。推定されたネットワークを再現する為に、個人毎の時間経過と共にパートナーシップを確率論的に形成し解消する過程を描写するモンテカルロ個体ベースモデルを構築し、そのネットワーク上を広がっていくHIVの流行のシミュレーターを構築する。HIVの流行の数理モデルには、Abu-Raddad et al. EPIDEMICS. 2010を基本とする。構築したシミュレーターを使い、ネットワーク統計量を変える事により性的接触ネットワーク構造とHIVの有病率の関係性を明らかにする。これにより、地域によるHIVの有病率の違いの説明を試みる。DHSによるデータが性的接触ネットワークをうまく説明できなかった事を受け、より広範囲のネットワーク統計量のパラメータ領域を探索し、現実のネットワークを捉える。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
計算量が大きいシミュレーションを行う為のワークステーション及びそのワークステーションに導入する為のソフトウェアの購入を、計算量が特に大きくなる次年度に持ち越すことにより、最新のワークステーションを購入しさらなる計算速度と研究遂行速度の効率化を図った。
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| 次年度使用額の使用計画 |
当初の予定どおり、ワークステーションとソフトウェアを購入する。
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