PCB・dioxinをはじめとする環境中の化学物質への胎児期暴露により子どもの発達に影響があることが指摘されている。本年度の目的は、PCB・dioxinへの胎児期曝露が,学童期の注意や認知に関わる脳活動に影響するかについて昨年度よりも人数を増やして検証し,ADHD症状との関連を検討することであった。そのため,児の脳波を追加測定して胎児期のPCB・dioxin曝露との関連を解析するとともに,ADHD-RS調査票の得点との関連について解析を行うこととした。 2002年から2005年に札幌市の一産院でリクルートし,札幌コホート研究に参加している母児514組に調査票を郵送してADHD-RSへの回答を得た。また,そのうち同意が得られた80組を対象として脳波の測定を行った。課題は視覚刺激オッドボール課題を用いて,P300の振幅および潜時について解析を行った。 結果として,胎児期の母体血中dioxin TEQ(Toxic equivalency)が高くなるほど,ターゲット刺激に対する脳波P3の平均振幅が電極Ozで有意に増強した。また,電極OzにおけるターゲットP3の潜時はADHD-RS得点と有意に相関した。 これらの結果より,胎児期のダイオキシンへの曝露が学童期の認知判断に関わる脳活動に影響を与えることが検証された。また,それらの脳活動は,AD/HDに特徴的な症状を反映した。今後,不注意,多動・衝動などAD/HD症状のタイプにより脳活動が異なる可能性について,さらなる検討を行う。
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