研究課題/領域番号 |
15K19220
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 大介 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10646996)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レセプト情報 / 医療保険 / 医療経済学 / 臨床疫学 |
研究実績の概要 |
「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)」が整備され、平成22年から一部の集計データを学術研究のために利用可能となって以降、課題点が多く残されているものの、政府による利用基盤の整備は前進してきている。全国の全レセプトの90%以上に相当する約50億件の大規模なレセプト情報を追跡し、脳血管疾患を発症した全国の患者の長期的予後が量的に解明することは、医療提供体制の評価や医療の質改善の観点からも大変意義の高いものである。3年計画の初年度である平成27年度の本研究では、詳細な診療行為等が記載された個票データである「基本データセット」トを用いて、脳血管疾患患者およびリハビリテーション実施状況ならびに急性期治療薬の投薬状況について、全国の研究者に先駆けてレセプト情報の提供に関する承諾を厚生労働大臣より得た後、最終的な分析データとして用いる、性・年齢、保険種別等の患者属性情報、主病名、合併症名等の疾患情報、入院基本料、手術・処置、リハビリテーション等の診療行為情報、急性期治療薬や合併症治療薬等の医薬品情報の抽出条件の選定を行った。抽出の過程において、NDBデータベースの特殊仕様上における抽出項目の制限が生じたことから、合計3回のデータ抽出と検証作業を行い、最終的なデータセットを確定した。 本年度の研究では本邦初のデータセット抽出を行ったことから作業期間を要したものの、抽出条件に関して知見を得たことは、今後のNDBデータベースを用いた研究に係るデータセットモデルを策定したこととなり、今後の医療提供体制の評価や医療の質改善に係る研究を行う上で高い意義があったと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)レセプト情報等の抽出対象範囲を設定 抽出対象患者は脳梗塞に限定し、世界保健機関(WHO)より公表されている「疾病及び関連保険問題の国際統計分類」に準じて定められた「社会保険表章用疾病分類コード(b-0906及びb-0908)」を指定条件とした。また、合併症については当初計画通り36の傷病概念を対象とした。主病名に上記の傷病名コードが記載された患者を分析対象とし、患者1人当たりが有する傷病名の最大数は10とした。合併症の指定は東京大学医学部附属病院 脳神経外科宮脇 哲 助教からの専門的知識の助言を得て行った。抽出対象期間については入院日が平成22年度内とし、平成22年度以前からの入院患者や平成22年度に退院しなかった患者は除外した。これによるデータセットの件数は101,423件となった。 (2)傷病名・医薬品対応データベースを用いた抽出方法の開発 医薬品の抽出条件は医薬品添付文書に記載されている傷病名・医薬品名データベースを活用した。このデータベースは東京大学医学部附属病院病院情報システムで運用されており申請者が対応付け作業を行った。これにより医薬品の種類数は682,413となった。しかしながらNDBデータベースの仕様上、抽出可能上限数が診療行為等を含めて256項目に限定されることが明らかとなった。そのため東京大学医学部附属病院 脳神経外科宮脇 哲 助教による専門的知識の助言を得て、急性期治療薬の一部に限定することとした。 (3)未入力傷病名から傷病名を推定する方法の開発 抽出したレセプト情報から、傷病名が未入力の情報に対して統計的に妥当な正解を推定する手法を検討した。当初の計画では、傷病名・医薬品名データベースを活用した「完全情報最尤法」または「多重代入法」を予定していたが、(2)の通り抽出可能上限数が限定されたことから傷病名と医薬品の欠損パターンが限定された。
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今後の研究の推進方策 |
「基本データセット」を検証した結果、抽出項目数に上限があることが明らかとなった。 いっぽう、平成27年12月24日より、東京大学に「レセプト情報等オンサイトリサーチセンター(仮称)」が開設し試行運用が開始された。 これまではデータ抽出条件の申請と提供にかかる手続きに期間を要していたが、本センターの開設より研究者自らがNDBデータベースにアクセスしデータ抽出条件プログラムを直接操作することで抽出・検証を行う環境が整備された。 本研究の申請者はこのデータベースのアクセス権限を既に有している。そのため今後は基本データセットによる分析を進めるとともに、抽出項目数の上限のない仕様で新たなデータ抽出を行う。
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