昨年度に得られた知見を基に、脳血管疾患において非弁膜症性心房細動(NVAF)の脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)患者の再発予防のために行われる抗凝 固療法についての経済評価研究へ応用させることとした。 直接トロンビン阻害薬や第Xa因子阻害薬を代表とする非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)が非弁膜症性心房細動患者における脳梗塞または一過性脳虚血発 作(TIA)の再発リスクを抑える抗凝固療法薬として認可されており、従来治療と比較した有効性や経済性についての研究が行われている。先行研究では第III相 国際共同試験による大規模臨床試験に基づく臨床的エビデンスおよび長期追跡評価により、NOAC群が従来治療よりも脳梗塞発生率、重度の出血性合併症発生率、 死亡率等の臨床指標が統計的有意に優れているとの報告がなされている。 いっぽう、大規模な医療費請求情報を用いた先行研究では、統計的有意差が認められ ない、または有効性は限定的であることが示されている。しかしながら諸外国の大規模データは外来診療情報を追跡することができず、短期的アウトカムに留まっている。 国内の先行研究では急性期医療期間の入院治療を対象としたDPC/PDPSデータを用いたNOACの有効性に関する研究はあるが、経済評価については議論が続いている。 本研究は非弁膜症生心房細動を有する患者を対象に、NOACを処方した患者群と従来治療(VKA)の患者群を比較し、虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作の発生 率、医療費、診療日数を評価した(佐藤 第12回医療経済学会)。解析の結果、NOAC群とVKA群の虚血性脳卒中の発生割合は同等であったが、NOAC群における直接型第Xa因子阻害薬群では治療期間が短いが患者あたり医療費は約1.6倍高くなった。
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