研究実績の概要 |
本年度は、「浜松母と子の出生コホート」(HBC Study) にエントリーしている、1000名を超える幼児期の子どもを対象に、自己制御機能に関する発達検査を研究協力者とともに行った。まず、Cardiff Infant Contentiousness Scale (Hay et al., 2010) を用いて、たたく、かみつく、怒る、かんしゃくを起こすといった子どもの攻撃性を測定した。また、Early Childhood Behavior Questionnaire (Putnam et al., 2006) を施行し、活動性、フラストレーション、衝動性、動作の活発さ、刺激への敏感さ、社会性をはじめとした18の側面からなる子どもの気質を測定した。 これらのデータを分析した結果、以下の2つの成果が得られた。第1に、妊娠中に測定された母親の社会性の問題は、産後4週における抑うつ症状を高めるとともに、その産後抑うつ症状が、子どもの攻撃性を高めることが示された。この知見は、査読付きの英文雑誌に掲載されることが決まっている。第2に、産後2週、4週、8週、40週における母親の抑うつ症状は、その程度や変化のパターン(発達軌跡)によって6つのタイプに分かれることが占めされた。こうした産後抑うつ症状の発達軌跡は、母親の自閉症スペクトラムに似た行動傾向によって予測されたり、はじめから一貫して高い産後抑うつ症状を呈することが、子どもの攻撃性を高めたりすることも示唆された。この知見を国内の学術大会にて報告した(優秀大会発表賞受賞)。
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