腎疾患は自覚症状に乏しく、学校や地域、職場などでの検尿異常(チャンス蛋白尿・血尿)が腎疾患発見のきっかけになることが多い。本邦は世界でも類をみない検尿システムを備えているが、健診現場における検尿結果は解釈に難渋することも多い。本研究は、健診現場における「適切かつ効率的な検尿」を目指し、「効率的なスクリーニングシステム」の開発を行う研究である。 平成29年度は前年度に取得した基礎データの知見を踏まえ、新たな研究計画を策定した。本学倫理委員会による審査を通過した後に、各年における精緻な有所見率の算出や、有所見者の継続割合、所見の出現パターンなどを解析した。これにより、特に学生において、年次変化を考慮した検尿の新たな解釈パターンを見いだし、健診の受検勧奨・精密検査の受診など、早期における腎疾患発見にむけて具体的な対応が必要な群が判明した。同時に、検尿および健康診断の啓蒙活動として、講義やポスター・パンフレットなどの作成を行った。 今後は、本研究で確認された群を中心に、健診の受検勧奨・精密検査の受診といったスクリーニングを強める。また、実際の診断についても調査を行い、スクリーニングの正診割合を算出する。これにより、健診における検尿のさらなる効率化が図れると考えている。同時に年毎の調査を継続し、システムのブラッシュアップを図るとともに身体所見や問診所見など他所見との組み合わせについても検討していく予定である。
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