研究実績の概要 |
インフルエンザの流行規模縮小・重症化予防のために、「ウイルス株による増殖能の違い」を検証した。インフルエンザは重症化による死亡例が多いにもかかわらず、重症化を予測する方法がない。ウイルス量と重症度との相関を検討する意義は大きく、重症化指標樹立への期待は大きい。本研究では、インフルエンザウイルス増殖能と流行規模・重症化傾向との関係に注目した。 インフルエンザ患者鼻汁採取、型・亜型判別、増殖能と臨床症状との比較、増殖能決定因子探索の順に到達点を設定した。Madin-Darby canine kidney細胞培養系を用い、一定量のA(H1N1)亜型、A(H3N2)亜型、B型が、到達するウイルス量レベルにより増殖能を決定した。すでに、全ての型・亜型の増殖能には株による差があることを明らかにした。そして、増殖能と流行規模(系統樹上の類似株集団の大きさ)との関連、増殖能と臨床症状(発熱期間等)との関連について解析を進めた。さらに、増殖能を規定する責任遺伝子の検討を加える。研究は鳥取県感染症懇話会の協力を得て、鳥取県内の4施設を定点とし、インフルエンザ患者鼻汁(3,500株以上)を収集した。詳細な情報も入手可能であり、追跡調査も可能な研究体制となった。 ウイルスの「量」を決定するウイルスの「性質」を知ることは重要である。増殖能が予後判定因子の候補になりうる。また、増殖能関連因子は、重症化予防のための診断学への応用可能である。このようにして、流行規模縮小、重症化予防を目指す。
|