研究実績の概要 |
我が国は、世界有数の脳卒中高罹患率国であり、過去60年の高血圧症の予防戦略は成功を収め、出血性脳卒中を中心に罹患率低下に結びついた.動脈硬化は、弾性線維や筋層での内膜肥厚が起こる大中血管における粥状硬化症と細動脈において硝子様肥厚を来す細動脈硬化症があるが、生体で評価することは難しい.本研究の目的は、血圧脈波検査と頭部MRI微小出血病変(Cerebral microbleeds; CMB)の有無を評価し、その関連性を検討することである. 本研究の対象者は、2013年1月から2015年12月までの3年間に対象病院において頭部単純MR T2*強調画像を撮影した成人定期通院患者とした.脳卒中既往者、認知症患者は除外した.通院時に身体計測情報、基礎疾患、薬剤情報、喫煙・飲酒歴情報を取得して、血圧脈波検査を行なった.CMBはMRI T2*画像で低輝度となる斑状病変で、5mmまでの病変とした.CMBとCAVI値の関連について、ロジスティック回帰モデルを用いて解析を行った. 138名をリクルートし、欠損データを除いた97名を解析対象者とした.対象者の平均年齢は74.4歳、男性は50.5%、 CAVI値の平均は9.1であった.CMBは19名で認められた.オッズ比1.10(95%信頼区間0.79, 1.53, P=0.567)であり、身長、体重、古典的動脈硬化リスク因子、抗凝固薬・抗血小板薬の内服で調整後のオッズ比は1.04 (0.68, 1.59, P=0.842)であった. 本研究では、脳の小血管病変の指標であるCMBと粥状硬化症のマーカーであるCAVIとの関連は認めなかった.CMB有所見者での出血性脳卒中の予防的な介入はまだ確定されていないが、今後疾病の予防が行われる可能性がある.その際は、動脈粥状硬化症の指標ではなく、CMBを指標として用いることが妥当であると考えられる.
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