研究課題/領域番号 |
15K19231
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
原田 成 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10738090)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | メタボロミクス疫学 / ゲノム疫学 / 尿酸 / 腎機能障害 / 循環器疾患 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
生活習慣病領域でのオーダーメイド予防医療の実現のためには、遺伝子型と疾患発症の間にある、発症機序の疫学的解明が重要である。そこで、2012年より地域コホートで集積済の3154名の既存メタボロームデータと抽出済DNAを活用し、高尿酸血症関連遺伝子の多型を測定してゲノム-メタボロームワイド関連解析により遺伝子型別の網羅的代謝動態の解明を進めている。 これまでに、「鶴岡市民を対象とした地域コホート研究」の参加者で、血液・尿メタボローム測定が完了し、DNAが抽出済である3154名に対し、SNPtype法により高尿酸血症関連遺伝子(関連が強く、日本人でのリスクアレル頻度の高いABCG2、SLC2A、SLC22A12、ALDH2)のSNPジェノタイピングを完了させた。 得られた遺伝子多型情報と既存のメタボロームデータを組み合わせて、ゲノム-メタボロームワイド関連解析を実施し、中間解析結果を得た。複数の尿酸関連ゲノム-メタボローム-バイオマーカー候補が同定され、特に、尿酸を介した腎機能低下とメタボロームの間に強い関連が認められた。これらの関係は尿酸に関連する遺伝子型によって異なる可能性が示唆された。 上記の中間解析結果が良好と考えられたことから、これらの結果が別集団でも再現されることを確認するために、バリデーションコホートのDNA抽出およびSNPジェノタイピングを開始、現在進行中である。 また、本研究は時間断面研究であり、健康に関する生体情報が真にcausal であるかどうかは明確にはならない。そのため、健康状態の変化を把握する追跡・継続調査へ向けた基盤整備も同時に進めており、健康診断結果や疾患罹患の情報を得る体制が充分に整いつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度は①オリジナルコホートに対する高尿酸血症遺伝子多型のジェノタイピング、②遺伝子多型の分布ならびに血清尿酸値の関連についての中間解析、③コホートとしての継続調査・追跡調査への基盤整備、の3点を行う予定としていた。 ①のジェノタイピングが研究協力者の多大な貢献により、当初の計画以上に順調に進展したことから、②中間解析を早いタイミングで行うことが可能となった。また、中間解析の結果も有望であったことから、計画の見直しが必要ないことが確認され、平成28年度に実施予定としていた、バリデーションコホートのDNA抽出およびジェノタイピングを前倒しで開始することができた。 ③のコホート基盤整備も、関連する自治体および医療機関等の協力を得て、順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
中間解析で良好な結果を得たが、より科学的な妥当性を担保するために、複数の統計学的解析手法を用いて、さらに詳細な解析を進める。また、得られた尿酸関連バイオマーカー候補について、腎機能に加え、肥満・高血圧・耐糖能異常等の心血管疾患リスク因子との関連を仔細に検討し、尿酸値が独立して関連する代謝物質・経路と、心血管疾患リスク因子と関連して増減する代謝物質・経路を特定する。これにより、高尿酸血症バイオマーカーおよび、心血管疾患リスクバイオマーカーを高尿酸血症関連遺伝子多型ごとに個別的に明らかにする。 次に、メタボロームの多変量解析はover-fittingとなる危険性があるため、コホート内の他サンプルを使用してバイオマーカーの妥当性を検証する。検証に必要なバリデーションコホートについて、バフィーコートからのDNA抽出およびSNPジェノタイピングは既に順調に進行中である。 また、平成27年度から進めているコホート基盤整備もそのまま推進する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
バリデーションコホートのバフィーコートからのDNA抽出を行なうために前倒し申請を行ったが、委託先のキャパシティが当初の予定より縮小されたために、平成27年度内の委託件数が減ったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初の計画通り、バリデーションコホートのバフィーコートについて、委託によるDNA抽出を進めるとともに、DNA解析、コホートの基盤整備を引き続き実施する。また、国際学会における成果発表を行なう。
|