生活習慣病領域でのオーダーメイド予防医療の実現のためには、遺伝子型と疾患発症の間にある、発症機序の疫学的解明が重要である。そこで、2012年より地域コホートで集積済の3154名の既存メタボロームデータと抽出済DNAを活用し、高尿酸血症関連遺伝子の多型を測定してゲノム-メタボロームワイド関連解析により遺伝子型別の網羅的代謝動態の解明を実施した。 「鶴岡市民を対象とした地域コホート研究」の参加者を、discovery cohortとvalidation cohortに分け、前年度の中間解析で尿酸関連ゲノム-メタボロームバイオマーカー関連解析において良好なモデリングを得たdiscovery cohortの結果の再現性を検討するため、validation cohortのSNPジェノタイピングを実施した。対象とした高尿酸血漿関連遺伝子は、ABCG2、SLC2A、SLC22A12、ALDH2である。Validation cohortにおいても、discovery cohortと同様のゲノム-メタボロミクス関連解析を実施し、概ね結果が再現されることが示された。特に、尿酸を介した腎機能低下が、血漿メタボロミクス・プロファイルと強く関連することが認められた。この結果は、尿酸値をターゲットとした予防において、遺伝子型を考慮するのみならず、メタボロミクス・プロファイルも参照することにより、より個人に即した効果の高い介入が可能になることを示唆する。 また、本研究は時間断面研究であり、健康に関する生体情報が真にcausalであるかどうかは明確にはならない。そのため、健康状態の変化を把握する追跡・継続調査に向けた基盤整備も同時に進め、健康診断結果や疾患罹患の情報を得る体制を整えた。
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