研究課題/領域番号 |
15K19237
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷 昇子 京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (70553072)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 健康管理 / 慢性心不全 / 在宅 / 高齢患者 / タブレット端末 |
研究実績の概要 |
本研究課題では慢性心不全を有する高齢患者を想定し、患者自身が生活習慣の把握や管理を可能とするコンテンツ・機能の提供によって行動変容の促進を支援し、高齢患者の心不全重症化予防に貢献することを目指す。想定する患者の生活習慣改善では適正な生活習慣管理が不可欠となるため、昨年度に生活習慣管理コンテンツと教育用視覚コンテンツから成るWebアプリケーションソフトウェアを設計し、高齢者向け生活習慣改善支援システム(以下、システム)として一部を実装した。システムの試用を予定している施設にて臨床現場でのフィージビリティを調査するため、本年度は対象施設の循環器病専門医に対するヒアリングを実施した。その結果、明らかとなった機能面の問題点を改善し、高齢患者が操作しやすいように入力インタフェース(IF)のデザインを工夫した。患者が入力する生活習慣情報(計測値)は、タブレット端末のブラウザ上で動作可能な入力IFを介してサーバ内のデータベース(DB)に登録され、一画面で一日の生活習慣情報の入力状況確認と入力フォーム選択ができる仕組みとしているが、この仕組みに関連して(1)入力情報の登録機能と(2)登録情報の表示・編集機能の問題点を改善した。具体的には、運用にあわせて全項目を入力しない状態でも情報登録できるような設定へと変更したほか、プルダウンリストで選択した入力日(過去一週間分)の登録情報について表示・編集を可能とし、必要に応じて上書き修正できる仕様へと変更した。また患者管理指導に要する情報として、(3)自覚症状に関する項目(むくみ、息切れ)を追加した。DBへの情報登録では、管理者が患者用ID・パスワードをユーザ管理画面にて登録し、患者はID・パスワード認証で患者用画面にログイン後、生活習慣情報(計測値)をサーバへ送信する必要があるため、管理者側・患者側ともに(4)SSLによる暗号化通信を導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究計画では、インターネットを介して使用するアプリケーションソフトウェア(以下、アプリ)を開発し、このアプリに組み込む食事管理と服薬情報の視覚コンテンツを作成することとなっている。平成27年度(初年度)4月時点で、研究代表者の所属機関変更により、前所属機関にて開発された先行システムの生活習慣管理機能を予定通りに活用することは困難となったが、生活習慣管理機能は本研究課題を遂行する上で不可欠であり、また実際の患者管理指導に携わる担当医の現状把握が必要と考えられたため、初年度は協力を得た循環器専門医(以下、専門医)に対する事前ヒアリングを行い、その結果を踏まえてWebアプリとして高齢者向け生活習慣改善支援システム(以下、システム)を開発した。平成28年度(本年度)では、臨床現場にてシステムのフィージビリティを調査するため、試用を予定している施設を訪問し、専門医に対するヒアリングを実施した。その結果、患者管理指導に要する情報の追加が必要となったほか、患者の情報入力に関わる機能(入力情報の登録機能、登録情報の表示・編集機能)の問題点が明らかとなった。本年度はこれらに対応することを優先してシステムの実装作業を進めたが、予定していたフードモデル参照機能、薬剤情報参照機能のプログラム実装にまで至らなかった。従って達成度は「遅れている」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題で構築するシステムの利活用にむけ、これまでのヒアリング結果から優先度が高いと考えられる生活習慣管理コンテンツを中心に、実際の臨床現場における開発システムのフィージビリティ調査を行う予定である。評価者として、患者管理指導に携わる担当医を含めた医療従事者数名を予定し、評価者への調査方法はヒアリングを計画している。この理由として、昨年度の研究計画で本年度に実装を予定していた視覚コンテンツは、日々の生活習慣管理を支援する位置づけであるため、開発システムのフィージビリティ調査から得られる情報も加味して、オンラインデータベース(DB)が有すべき機能を検討するほうがより効率的と考えた。本年度の計画変更にあわせて、次年度に制作を予定している視覚コンテンツはフードモデル参照機能と薬剤情報参照機能を有するため、これらの機能設計とその仕様書作成を行う。その仕様書に従って、オンラインDBの作成と参照プログラムの実装を行う予定である。あわせて、これまでに選定した食品75種の画像準備を進める。ただし作業時間を短縮するため、視覚コンテンツが有する機能の実装作業に関しては一部を外部委託する方針で進める。また次年度は最終年度であるため、本研究にて得られた結果をまとめ、日本医療情報学会、日本総合健診医学会、日本未病システム学会を中心として成果発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
横浜で開催された第36回医療情報学連合大会(2016/11/21-24)に参加し、成果発表・調査情報収集を行う計画としていたが、所属部署の必須業務と重なり、参加期間を短縮せざるを得ず、旅費2万円程度が未使用となったため、この未使用分を開発システムの改善に必要となる実装作業の外部委託費用に含め、予算額57万円の支出を予定していた。作業内訳は、①入力情報の登録機能の改修、②登録情報の表示部の改修、③登録項目の新規追加、④SSL対応、⑤登録情報のグラフ表示、⑥ログ機能の追加であったが、本研究の進捗状況と作業時間を再考し、優先度の高い実装を確実に完了させるため、本年度は①~④までを委託する計画に変更した。この影響で実支出額499,932円となったが、視覚コンテンツの制作でも委託が必要となるため、予算額からの差額分は次年度の委託費用に補填することとした。これが、次年度使用額が生じた主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、本年度に改善した開発システムに組み込む視覚コンテンツ(フードモデル参照機能、薬剤情報参照機能)の制作を予定し、一部の実装作業を外部委託する費用として支出する予定である。また、調査・研究打合わせ、成果発表のための国内旅費のほか、学術誌への投稿料といったその他経費の支出を予定している。
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