研究課題
この研究計画では、うつ病患者の血液サンプルから自殺に関連していると考えられる遺伝子および脂質を測定し、自殺ハイリスク群に対するバイオマーカーとしての感度特異度および予測パターンの検討を行うことを目的としている。今年度は患者さんのリクルートおよび健常者の血液のサンプリングを行い、心理検査を施行した。収集したデータを用い、外向性や探求行動などの人格特性と関連が報告されているガンマインターフェロン(γ-interferon: IFN-γ)のrs2430561多型と健常者の人格特性との関連を検討した。その結果、IFN-γ rs2430561と人格特性との関連は認められなかった。これらの結果は論文としてまとめ、国際誌に受理された。また、うつ病や自殺行動/完遂者において関わりの深い多価不飽和脂肪酸についても検討を行った。多価不飽和脂肪酸は抑うつ状態や回避行動の高さとの関連が報告されており、血液中のω-3(EPAとDHA)、ω-6(AAとDGLA)およびEPA/AA比と抑うつ状態および人格特性との関連を健常者のサンプルを用い検討した。その結果、抑うつ状態およびいずれの人格特性とも多価不飽和脂肪酸は関連を認めなかった。これらの結果は臨床精神神経薬理学会で発表し、論文としてまとめており現時点で国際誌へ投稿中である。患者のサンプルを用いた検討も必要であるため、引き続きサンプリングを行っていき随時解析をする予定である。患者と健常者において自殺行動に特有の遺伝子および脂質の変化を観察できれば、自殺のリスクファクターとして利用可能になるものと考えられる。
3: やや遅れている
現在までのところ申請者が所属している弘前大学医学部の付属病院のみで患者のサンプリングを行っているが、本研究の対象となる患者のリクルートに難航している。サンプルの収集に遅れが出ているため、解析まで進めていない状況である。健常者サンプルについてはすでにサンプリングは完了している。
次年度以降も引き続きサンプリング行っていくが、患者サンプルの収集について今後は近隣の関連病院にも協力していただきサンプリングを行う予定である。ある程度の数が集まった時点で遺伝子解析および脂質の変化を観察し、健常者と比較検討することで、それらのプロフィールの違いを明らかにする。
初年度ということもあり、患者のサンプリングが予定よりも進まなかったため、当初予定していた消耗品の購入が若干少なかったことが挙げられる。
次年度使用額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては、研究用試薬の購入、統計解析に必要な講習会への参加、研究成果報告のための学会発表の旅費に充てること、海外文献の翻訳のための謝金として使用すること、などを計画している。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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