研究課題
本研究は、精神疾患患者の血液から自殺に関連したバイオマーカーの変動を定量的に観察し、自殺リスクに関連する遺伝子またはタンパク質の探索をうことを目的としている。本年度は食欲や睡眠に関わる神経ペプチドであるオレキシンに着目し、統合失調症、うつ病、躁うつ病の患者の血中オレキシン濃度を測定し、健常者との比較を行った。その結果、躁うつ病患者の平均血中オレキシン濃度は健常者と比較して有意に低下していることが認められた。統合失調症患者とうつ病患者の平均血漿オレキシン濃度は健常者に比べ有意な低下は見られなかったが、患者群では全体的に健常者よりも低い値を示した。健常者の血漿オレキシン濃度の中央値をカットオフ値とした場合、カットオフ値より低い値を示した患者の割合は統合失調症で73.8%(OR = 2.81)、うつ病で78.5%(OR = 3.65)、躁うつ病で87.5%(OR = 7.00)であった。年齢、BMI、精神症状の重症度などの臨床症状や服薬量との相関は認められなかった。精神疾患における血中オレキシン濃度に関しては報告がほとんどないが、特に躁うつ病患者は自殺率が高い集団として知られており、本研究の結果は、自殺関連バイオマーカー探索だけでなく躁うつ病の病態を理解する一助になると考えられる。今後は自殺傾向を評価する質問紙も組み入れることで、自殺傾向の高い特性を持つ人の評価や自殺予測が可能となり、バイオマーカーと組み合わせた予測ツールの開発が期待される。これらの結果は論文としてまとめ、国際誌に投稿し受理されている。
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巻: 印刷中 ページ: -
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