研究課題
本研究では、血管内皮あるいは平滑筋細胞特異的にRnf213変異体を過剰発現するTgマウスを作成し、もやもや病で認める狭窄性の変化を再現するモデルマウスを確立することを目的とする。モデルマウス確立を通じて、①Rnf213 R4810K 過剰発現が脳血管に与える影響と分子メカニズム、②もやもや病の病態における血管内皮細胞・平滑筋細胞それぞれが果たす役割、③もやもや病発症に関与する環境因子の特定およびその機序を明らかにする。本年度はRnf213 R4810Kによるangiogenesis低下をin vivoで検討する目的で、血管内皮および平滑筋特異的RNF213 R4810K相当変異体トランスジェニック(Tg)マウスの作成と低酸素曝露による脳血管angiogenesisの評価を行った。野生型あるいはp.R4757K(ヒトp.R4810Kに相当)を有するマウスRnf213とCAGプロモーター配列の間にloxPで挟まれた停止配列が存在するベクターを用いてTgマウスを作成した後、組織特異的Cre発現マウスと交配を行い、血管内皮あるいは平滑筋特異的Rnf213 Tgマウスを作成した。Rnf213 R4757KまたはRNF213 WTを血管内皮特異的に発現するTgマウス(①EC-Mut-Tgおよび②EC-WT-Tg)、Rnf213 R4757Kを血管平滑筋特異的に発現するTgマウス(③SMC-Mut-Tg)、Rnf213 KOマウス(④KO)および野生型マウス(⑤WT)の5群のマウスを3週齢より2週間8%酸素下で飼育した後、Glut1免疫組織化学により大脳皮質の脳毛細血管数を計測し、angiogenesisを評価した。その結果、低酸素曝露による脳毛細血管数の変化を評価した結果、EC-Mut-Tg以外のすべてのマウスで低酸素曝露により脳毛細血管が増加したのに対し、EC-Mut-Tgでは変化がなかった。この結果は、マウスモデルにおいて、in vitroでの結果と同様に、RNF213変異体の血管内皮発現が低酸素によるangiogenesisを抑制することを示している。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度はTgマウスの作成および脳血管angiogenesisの評価を完了し、その成果を論文として発表したため(Kobayashi et al.J Am Heart Assoc 2015)。
今後は内皮特異的RNF213変異体Tgマウス、Rnf213 KOマウス、野生型マウスをもちいて総頸動脈結紮モデルを作成し、脳低還流状態にしたのちngiogenesis、arteriogenesis、脳血流量、脳梗塞の評価をMRIイメージングおよび病理組織的検討を行う。
全体の実施計画に影響しない程度の少額である。
残額は少額であり、計画にそって次年度経費とあわせ使用する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
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