研究課題
近年、もやもや病の感受性遺伝子としてRNF213が同定され、p.R4810K多型が東アジアの患者において非常に強い相関を示すことが証明された。本研究では、血管内皮あるいは平滑筋細胞特異的にRNF213変異体を過剰発現するTgマウスを作成し、もやもや病で認める狭窄性の変化を再現するモデルマウスを確立することを目的とする。モデルマウス確立を通じて、①RNF213 R4810K過剰発現が脳血管に与える影響と分子メカニズム、②もやもや病の病態における血管内皮細胞・平滑筋細胞それぞれが果たす役割、③もやもや病発症に関与する環境因子の特定およびその機序を明らかにする。昨年度は血管内皮特異的Rnf213変異体Tgマウス、Rnf213 KOマウス、野生型マウスを用いた両側総頸動脈狭窄(BCAS)法による脳低還流モデルを用いて、Rnf213 KOマウスは他のマウスと比較して有意に生存率が低いことを示した。本年度は上記BCASモデルのMRイメージングによる脳血流測定および脳血管の病理組織学的解析を行った。その結果、術後7日後にはRnf213 KOマウス、術後28日後ではRnf213 KOマウスおよび血管内皮特異的Rnf213変異体Tgマウスにおいて脳血流量が野生型マウスと比較して有意に低かった。さらに、病理組織学的検討により28日後時点のRnf213 KOマウスおよび血管内皮特異的Rnf213変異体Tgマウス脳でangiogenesisが抑制されていることが明らかとなった。以上より、RNF213が脳血流の維持に重要な役割を果たし、RNF213遺伝子変異の保因者がもやもや病の主たる症状のひとつである脳虚血に対して脆弱であることが示唆されるとともに、脳低灌流モデルがもやもや病のマウスモデル確立に有用である可能性が示された。本成果はScientific Reports誌に掲載した。
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