研究課題/領域番号 |
15K19245
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
齊藤 信夫 長崎大学, 熱帯医学研究所, 研究協力員 (60626018)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 学校・学級閉鎖 / インフルエンザ / 罹患率 |
研究実績の概要 |
平成27年4月第112回日本内科学会総会において「インフルエンザ受診が翌シーズンのインフルエンザ受診に及ぼす効果」という題で発表し、上五島におけるインフルエンザ患者数、ワクチン効果など全体的なインフルエンザ流行状況を報告した。これらのデータは学校閉鎖が地域への流行に及ぼす影響を検討するうえでの基礎データとなる。また、インフルエンザ感染後の強い防御効果を示すとともに、前年度のワクチンは今年度のワクチン効果に影響を及ぼすということを明らかにした。平成27年度研究を開始し、平成19年から平成26年までの、学校閉鎖データと地域インフルエンザ流行データの収集、データクリーニングが終了した。平成19年から平成26年度までの上五島における全学級、学校閉鎖のデータを入手し解析した結果、学校閉鎖17回、学年閉鎖97回、学級閉鎖42回が観察された。上五島病院においては、観察期間中、合計13586人のかぜ症状、3699人のインフルエンザA陽性者、992件のインフルエンザB陽性者がみられた。うち、小学校、中学校、高等学校のインフルエンザA陽性者は1986人、インフルエンザB陽性者は656人であった。平成27年度のデータ入手、サンプル採取が困難な状況となり、平成20年から平成26年までのデータを解析することとした。パンデミックインフルエンザシーズンである平成21年が最も学校閉鎖、学級閉鎖ともに多く(全体の56%)解析には十分なデータであると判断した。上五島全体の学校、学級でのインフルエンザ感染者数、罹患率や地域での感染者数、罹患率を算出した。現在それぞれの相関関係について解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの収集は順調に進んでいるが、平成27年度はサンプル採取、データ収集ともに困難な状況となった。これは上五島病院が他の研究との兼ね合いでそちらを優先することになったためである。当初はPCRによる正確な診断を行う予定であったが、行うことが出来なくなった。しかし、インフルエンザ診断迅速キットの欠点である低感度を補正することにより、より正確なインフルエンザ罹患率を推定できるものと考える。補正には、平成25年度収集のサンプルをランダムに抽出し、PCRを行うことで、迅速診断キットの診断精度を計算できるものと考える。この診断精度を補正式に利用する。PCRによる検討が行えなくなったが、学校・学級閉鎖の影響を計測するのには迅速キットの低感度を補正することで問題がないと考える。また、平成19年から平成26年度までのデータで解析に十分量を入手できており、平成27年度のデータがなくても十分な解析ができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、集まったデータを使用し、学校・学級閉鎖と地域でのインフルエンザ流行との関係を解析していく。また、平成25年の検体を利用し、PCRを行い、迅速診断キット低感度を補う補正式を完成させる。その後、学校・学級閉鎖が各々地域の流行とどのような関係性があるか見極め、学校・学級閉鎖の適切なタイミングと期間の設定を行う予定である。 今後、全国規模で利用する場合、単純な疫学・統計解析のみで行うより、数理モデルを利用した方法で行ったほうがより正確予測が可能と考え、ロンドン熱帯医学校のアントン・カマーチョ博士を共同研究者として迎えた。アントン・カマーチョ博士はエボラ出血熱流行時に現場で活用できる数理モデルを構築した研究者である。同様の数理モデルをインフルエンザで構築するため、気温、湿度などより多くの因子をモデルに組み込み、インフルエンザシーズン中にどのような学校閉鎖・学級閉鎖を行えば流行早期を防ぐことができるか理想となるモデルを構築することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、平成27年度検体を集めることができず、サンプル解析に予算をあまり使うことができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では、サンプル解析、海外での論文投稿などを行うことに予算を使用する予定である。
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