近年、国内外においてネコロタウイルスと類似の遺伝子型構成をもつロタウイルスがヒトから相次いで検出されているが、このようなネコロタウイルス様ヒトロタウイルスの起源は明らかとなっていない。本研究は、日本のネコから分離したネコロタウイルスの全ゲノム解析を行い、ネコロタウイルス様ヒトロタウイルスと比較することにより、ネコとヒトの間におけるロタウイルスの伝播と進化の過程を理解することを目的とする。 平成30年度は、前年度に引き続き、日本国内のネコの糞便または直腸スワブから抽出したRNA中に含まれるロタウイルスゲノム上のNSP3遺伝子を標的とした定量RT-PCRによりロタウイルスを検出し、ロタウイルス陽性(Ct<40)と判断したサンプルについてそのG-P遺伝子型の同定を試みた。複数の遺伝子型を標的としたマルチプレックスPCRに加え、既知のネコロタウイルスに特徴的なG遺伝子(G3・G6遺伝子型)とP遺伝子(P[3]・P[9]遺伝子型)の塩基配列を基に設計したプライマーを用いて様々なPCR条件によりG-P遺伝子の増幅を試みたが、前年度までに検出したG6P[5]株およびG2株(P遺伝子型未同定)の他にはロタウイルスの遺伝子断片は増幅されなかった。また、培養細胞によるロタウイルスの分離を試みたが、前出のG6P[5]株以外には成功しなかった。結果として、本研究に用いた検体からはこれまでにネコからの検出が報告されているG3P[9]型、G6P[9]型又はG3P[3]型をもつロタウイルスは検出されなかった。
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