研究課題/領域番号 |
15K19250
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
木村 義成 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (20570641)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 救急搬送 / 地理情報システム / 救急不搬送 / 大阪市 |
研究実績の概要 |
本研究では、全国最大規模の救急搬送データベースをもとに、GIS(地理情報システム)を用いて、救急隊管轄地区ごとに不搬送事案が、他の重症患者の現場到着や病院到着時間に与える影響を推定する。さらに、救急搬送後の予後データを用いて、現場到着や病院到着時間と予後の関係を推定し、不搬送事案が、他の重傷患者の死亡率や入院継続率に与える影響を明らかにすることである。昨年度整備した大阪市消防局から提供された救急搬送データと救急隊の位置情報をもとに今年度は以下の分析を実施した。 ①大阪市内における理論的な救急隊管轄地区の算出した。GISを用いて市内の各救急隊が最短時間で到達できるエリア(救急隊管轄地区)を125mメッシュごとに求めて、不搬送分析の算出エリアとして定義した。 ②重症患者に影響を与えたと推測される不搬送事案の抽出した。上記のエリアのうち「A救急隊管轄地区」をサンプルに不搬送事案を抽出した。具体的には、1)A救急隊管轄地区で発生した救急覚知の抽出。2)管轄地区内でのA救急隊以外から出動した重症・中等症の覚知の抽出、3)管轄地区内でのA救急隊から出発した不搬送(拒否・酩酊・誤報・傷病者無)の覚知の抽出、以上の情報を抽出、集計した。 ③抽出した搬送情報から、「不搬送事案の帰署時刻>=重中等症の覚知時刻のケース」 と、「不搬送事案の引揚時刻>=重中等症の覚知時刻のケース」を本研究が定義する不搬送事案として取扱い各種統計量を算出した。 以上の分析内容に対して、救急医学の専門家と分析手法の妥当性について議論を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大阪府が管理する「救急搬送支援・情報収集・集計分析システム(ORION)」と本研究で整備している大阪市内での救急搬送のデータベースとの連結作業が遅れていることに起因する。ORIONのシステムに関して、研究代表者の本システムを利用した業務や研究に関わったことがないため、連結作業についてある程度、手探りの状態が続いており 連結作業の遅れのため、進捗状況に関しては「やや遅れている」という判断を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策に関しては、主に2つの点を中心に進める必要がある。 ①重症患者事案、および現場・病院到着時間に関するケースの増加。 本年度は、A救急隊管轄地区に関して救急不搬送による影響を算出したが、大阪市内の他の救急隊管轄地区についても、同様の方法で抽出を試みケース数を増加させることにより市内での救急隊管轄地区における不搬送事案が重症事案に与える影響について評価を実施する。 ②大阪府の「救急搬送支援・情報収集・集計分析システム(ORION)」から、「通常時搬送」時と「不搬送発生時搬送」時の重症患者搬送事案のデータと本年度まで整備した大阪市消防局の救急搬送データを連結し、「通常時搬送」時と「不搬送発生時搬送」時における現場到着時間や病院到着時間の差について統計的な検定を実施し、不搬送事案が、その他の事案に与える影響を評価する。 以上の分析を実施し、学会発表により、他の研究者からの本研究に対する意見を収集し、本研究にフィードバックする。
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次年度使用額が生じた理由 |
大阪府が管理する「救急搬送支援・情報収集・集計分析システム(ORION)」と本研究で整備している大阪市内での救急搬送のデータベースとの連結作業が遅れていることに起因する。連結作業についてはデータチェック作業など人手が必要な点があり、今年度の研究補助を行うアルバイト代の費用が当初予想していた金額よりも下回った点で、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
大阪府が管理する「救急搬送支援・情報収集・集計分析システム(ORION)」と本研究で整備している大阪市内での救急搬送のデータベースとの連結作業が遅れている状況であり、この作業手順を一刻も早く定めて、研究遂行を実施する。
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