研究課題/領域番号 |
15K19254
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研究機関 | 大阪府立公衆衛生研究所 |
研究代表者 |
土井 崇広 大阪府立公衆衛生研究所, その他部局等, 主任研究員 (90516767)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ホルムアルデヒド遊離型防腐剤 / イミダゾリジニルウレア / 分解物 |
研究実績の概要 |
ホルムアルデヒド遊離型防腐剤のうち、国内で化粧品に防腐剤として配合が認められているイミダゾリジニルウレアの分解物同定を試みた。確認できた分解物7化合物のうち、主要な4物質は既に同定済みのため残り3化合物を精製したが、分取量が少なく分解が速やかなため、核磁気共鳴スペクトル測定装置(NMR)による構造特定に至らなかった。また、イミダゾリジニルウレアの試薬中に透明な固体が認められたため、単結晶X線構造解析装置による分析を行ったがX線照射による回折像は確認できなかった。 NMRに供する十分量を得るため、イミダゾリジニルウレア分解物の精製を、アミノプロピルシリル化シリカゲルを用いた固相抽出を親水性相互作用クロマトグラフィー条件で実施した。カラム精製後の各フラクションをHPLCにより分析したところ、イミダゾリジニルウレア分解物のうちアラントイン、(4-hydroxymethyl-2,5-dioxo-imidazolidine-4-yl)-urea(HU)以外の分解物は確認できなかった。 イミダゾリジニルウレアの分解物は窒素をその構造上に含むため、NMRによる分析の感度が低いという問題があった。少量での分析による構造決定を可能とするため、15Nラベル化イミダゾリジニルウレアを合成し、分解物の構造推定を実施することとした。Berkeらの特許文献(US Patent3248285, 1966)のうち、水酸化ナトリウムを用いた方法によりイミダゾリジニルウレア試薬と同じ7化合物の混合物が合成できた。Cativielaらの方法(Green Chem. 2003, 5, 275-277)を参考に、尿素とグリオキシル酸からアラントインを合成できたことから、15Nラベルされた尿素を用いることで、15Nラベル化イミダゾリジニルウレアが合成できると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ホルムアルデヒド遊離型防腐剤の分解物のうち、構造特定に至っていない分解物の構造決定を試みているが、分解しやすい性質のため構造決定の実施が困難であった。そのため、研究実績の概要に示したように代替法の検討や情報収集を実施しており、当所の計画から進捗がやや遅れる結果となっている。平成27年度には所属課にリサイクルHPLCやフラッシュクロマトグラフィーなど、混合物から化合物を精製するための備品が整備されたため、今年度はスムーズな研究の進捗が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
ホルムアルデヒド遊離型防腐剤は、中間体等についてもホルムアルデヒドを遊離するなど分解しやすい性質を持つため、その構造特定を困難なものにしている。今後は分離精製後速やかなNMR分析を行うため、LC-NMRのようにon-lineでNMRの分析が実施可能な機器の利用も含め構造特定法を検討する。LC-NMRでの分析を可能とするため、15N、13Cラベル化した原料から各種ホルムアルデヒド遊離型防腐剤合成を行う。平成27年度中に、イミダゾリジニルウレア、ジアゾリジニルウレアについては合成法が確立できたため、先行して「15N-13Cラベル化ホルムアルデヒド遊離型防腐剤」を合成し、構造特定に至っていない防腐剤の構造決定を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画より研究の進捗が遅れており、結果として支出額が少ない結果となっている。特にNMRによる構造特定を実施することが年度内にできなかったため、その他に割り当てたNMRの施設利用料が支出されておらず、次年度に使用することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度前半に、LC-NMRを使用したホルムアルデヒド遊離型防腐剤分解物の構造特定を予定しており、前年度繰越分は当該時期に支出する予定である。平成28年度の計画は並行して当初計画通りの研究実施を予定しているため、前年度分とあわせて当該年度に使用を計画している。
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