日本国内で使用が認められている、イミダゾリジニルウレア(IU)・DMDMヒダントインおよびその分解物について、ペプチド結合性試験(DPRA)による皮膚感作性評価を行った。IU、DMDMヒダントインおよび1-MDMヒダントインについてはシステイン含有ペプチド、リジン含有ペプチドともにペプチドピークの減少が認められ、感作性は陽性と判定された。ホルムアルデヒドはリジン含有ペプチドではペプチド以外のピークと重なりが認められたため、システイン含有ペプチドのみの予測モデルを用い、陽性と判定された。これまでに試験を実施した分解物のうち、アラントイン、DMヒダントインはいずれのペプチドでもピークの減少は認められず、DPRAの判定は陰性であった。ホルムアルデヒドを遊離しうる分解物は陽性、ホルムアルデヒドを遊離しない分解物は陰性の判定を示したが、各反応系で生成すると想定される推定ホルムアルデヒド量とペプチドピークの減少割合には必ずしも相関が見られず、ホルムアルデヒドの寄与によらない皮膚感作の存在が示唆された。本研究で得られた結果を元に、さらに詳細な検討を行うことでホルムアルデヒド遊離型防腐剤による皮膚感作性の原因物質を特定することが期待できる。 また、前年度は分解物精製の過程で、IUが塩基性条件下で最終産物であるallantoinと4-HUに分解するという知見が得られた。この分解反応は可逆反応であると考えられたが、アミノプロピル固相カラムを塩基の反応場として用いることで、同時に生成したホルムアルデヒドを除去可能であり、不可逆的に分解を進行できることが明らかとなった。IUは分解しやすく、多くの中間分解産物を生成することが定量分析の妨げとなっていたが、アミノプロピル固相カラムによる前処理で得られた最終分解物を定量することで、化粧品中のIU配合量を推定する方法が構築できた。
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