研究課題
プラスミド性コリスチン耐性遺伝子mcr-3について、mcr-3を保有するプラスミドを含めた遺伝子解析を行った。地球規模課題対応国際技術協力事業(SATREPS)「薬剤耐性細菌発生機構の解明と食品管理における耐性菌モニタリングシステムの開発」で鶏肉及び豚肉から分離した第三世代セファロスポリン耐性大腸菌約350株のうち、261株を使用して研究を進めた。コリスチン感受性試験を行った結果、60株については、mcr-1を保有することが確認されたが、ESBL産生大腸菌2株については、mcr-1を保有しないのにも関わらず、コリスチン耐性を示すことが判明した。またこの2株はプラスミドの水平伝達によりコリスチン耐性を維持することから、プラスミド上に耐性遺伝子を有していた。この遺伝子を有する2株について次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析を行ったところ、コリスチン耐性遺伝子mcr-3であることが判明した。さらに詳細に解析を行ったところ、2株のmcr-3保有プラスミドのレプリコンタイプはIncFIIであり、2017年6月に中国で初めて報告されたプラスミドのレプリコンタイプIncHI2とは異なることが明らかとなった。一方で、mcr-3周辺の遺伝子配列を本研究株2株と既報で比較したところ、高い相同性がみられた。mcr-3遺伝子周辺にはmcr-1と同様にインサーションシーケンス(IS)を有しており、プラスミドの水平伝達の他にISによるmcr-3が拡散する可能性が推察された。本研究で第三世代セファロスポリン系抗菌薬耐性大腸菌261株のうち24%がコリスチン耐性を示し、すべての株でmcr-1もしくはmcr-3を有することが明らかとなった。中国では多くのコリスチン耐性菌および耐性遺伝子が報告されており、地理的に近いベトナムにおいても広くコリスチン耐性菌および耐性遺伝子が拡散している可能性が考えられた。
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FEMS Microbiology Letters
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10.1093/femsle/fny100