研究課題
本研究では、秋田県、茨城県、大阪府の3地域で、平成13~17年の住民健診で睡眠時無呼吸検査を実施した受診者(40~74歳男女約5300人)を対象とし、その後の健診による健康状態の変化、循環器疾患発生調査による脳卒中・虚血性心疾患の発生状況を把握した。これらの調査結果を用い、睡眠時無呼吸が腎機能低下、循環器疾患、心不全の発症と関連を明らかにすることが目的である。平成29年度は、これら対象者のうち、睡眠時無呼吸の検査時点および平成21~23年に健診を受診した者について、NT-proBNPを測定し、両時点におけるNT-proBNPの変化量との関連について分析した。睡眠時無呼吸の有無は睡眠1時間当たりの3%以上の血中酸素飽和度の低下頻度(3%ODI)が5回以上と定義した。統計解析の結果、性・年齢調整後のNT-proBNPの変化量は、睡眠時無呼吸を有さない者の21.9(95%信頼区間:16.4-27.4)pg/mLに対し、睡眠時無呼吸を有する者で35.8(27.1-44.6)pg/mLとNT-proBNPの変化量は有意の大きかった(p=0.009)。飲酒、喫煙、BMIを調整すると、関連は弱くなり、境界性の関連となった(p=0.05)。睡眠時無呼吸の検査時点において、心疾患・脳卒中のない平成28年末(茨城県は平成25年末)まで追跡したところ、脳卒中・虚血性心疾患は113件発生した。性・年齢調整循環器疾患発症ハザード比は、3%ODI<5と比べ、5≦3%ODI<15で1.43(95%信頼区間:0.89-2.31)、3%ODI≧15で1.66(0.80-3.43)であった(傾向性p=0.11)。飲酒、喫煙、BMIを考慮すると、この関連は強くなり、有意な関連となった(傾向性p=0.04)。以上より、睡眠時無呼吸はNT-proBNPの上昇、循環器疾患発症と有意に関連する可能性が示唆された。
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