当該年度は最終年度であった。本研究は医療機関の外来機能分化を誘導するために注目すべき関連要因とその誘導方法をデータにより示すことを目的としている。当該年度は前年度までに行った、HOMAS2を用いた原価コストに関する結果(手術なし症例、特に入院期間が長いものにおいて、収益にくらべコストがかかっているような例が見られた)ことを受け、DPC(Diagnosis Procedure Combination:診断群分類)調査データを個票レベルで用いて、前述症例における外来診療と、自院への入院にもつながっていない外来診療の内容についての分析を行った。 大学病院における外来は、地域の最後の砦として、本来であれば他院では診ることが難しい疾病を診る場合や、自院での入院に向けた前段階や退院後フォローが基本となるべきという観点から、外来受診患者のうち、前後1ヶ月の間に自院に入院していない患者を抽出した。例えば病院全体では約85%の患者が前後1ヶ月以内の入院に繋がっておらず、大学病院での外来受診の在り方を検討する必要があると考えられる結果が出た。診療科別に見たところ、病院全体の85%よりも入院率が低いレセプト科として、内科、精神科、神経内科、小児科、整形外科、脳神経外科、皮膚科、耳鼻咽喉科、麻酔科、リハビリテーション科、救急科であった。 このうち特に1回受診あたりの診療報酬が500点未満(5000円未満)の患者の割合が多いのは精神科、神経内科、整形外科、脳神経外科、皮膚科、麻酔科であり、これらの診療科においては、入院に繋がらない疾病や、退院後も長期間大学病院で外来診療をする必要性があるのか、地域連携が可能な症例が無いかの検討を行うことが、市中病院との外来機能分化や地域連携に繋がることが示唆された。
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