汚染除去の難度が高い医療器材に対しても効率的な洗浄が可能となる洗浄法の開発と検討をおこなった。医療器材の洗浄は、交叉感染の発生リスクを抑制するための臨床現場の重要業務であり、医療機器開発とも歩調を合わせた進展が必要である。本研究では、低侵襲手術の進歩や新しい手術手技の発展にともなう高機能化と小型化により構造が複雑化した次世代型の医療器材にも対応可能な洗浄システムの開発とその能力の検証を目指した。 医療器材の新しい洗浄法を考案した。高圧で噴射した洗浄液および高温のスチームを対象表面に噴射することで、効率的な汚染除去を可能にする方式を採用した。洗浄システムは、汚染除去のために装置先端のアタッチメントから水、洗浄液または高温スチームを噴射するものとし、高圧水または高温スチームの発生装置に接続する構造とした。 洗浄の対象となる医療器材の構造的特徴が汚染除去の難度に与える影響を明らかにするため、溶液への浸漬を繰り返したときの手術器械からの溶出タンパク質量のパターンを検討した。手術器械の構造的特徴によって残留タンパク質の溶出パターンが異なることが明らかになり、手術器械を水槽等に複数回浸漬したときのタンパク質溶出パターンに基づいて器械の構造を定量的に分類できることが示唆された。このような客観的手法に基づいて分類することで、医療器材の種類ごとに最適な洗浄条件が提案できると考えられた。 手術器械の洗浄に滅菌と同様の工程管理の考え方の導入を図るため、器材表面から洗浄液中に溶出するタンパク質量を連続測定して各段階の洗浄効果を評価した。鋼製手術器械に対する一定条件下の超音波洗浄では、器械種類に依らず同水準のログリダクションの洗浄効果が発揮されると推察された。これらの関係に基づいて各工程の洗浄条件を設定管理することで、残留汚染量の目標値を達成する手術器械の清浄度管理が実現可能と考えられた。
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