当救命救急センターでは、入院時と週1回の鼻腔・痰・尿の積極的監視培養を施行しメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の監視に努め、48時間以降に検出されたMRSAを院内感染と定義している。本研究においては、既存の方法にMRSAの遺伝子型を同定することを可能としたPCR based open reading typing (POT法)を加えることで院内感染の現状を明らかにすることを目的とした。 27-28年度の研究成果を下記に記載する。 27年度は、当救命救急センター入院する全患者を対象にMRSA保菌者の同定から検出されたMRSAを長期保存する行程を確立した。また、医療従事者の鼻腔から検体を採取しMRSAを同定する行程を確立した。検出されたMRSAに対してPOT法を施行し遺伝子型を同定した。28年度は、前年得られたPOT法の結果にpulsed-field gel electrophoresis(PFGE法)を追加することで両分子疫学検査法を比較した。PFGE法で得られた結果とPOT法の結果では異なるものが存在することが明らかになった。検出時期や抗菌薬感受性などの臨床経過を検証し、POT法の結果に加えることで、POT法の結果の精度が向上すると考えられた。 以上より、POT法によりMRSAの遺伝子型を同定することで、院内感染を詳細に把握することができ、医療従事者のMRSAを同定することで、医療従事者を含めたセンター全体での感染対策を構築することが可能となった。今後どのように介入を積極的に行なっていくかは医療従事者への倫理面の配慮が最大の問題点であり検討が必要である。また、本研究は単施設での解析であり、対象を増やし多施設の現状を把握することが今後の課題である。
|