研究課題/領域番号 |
15K19264
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
佐野 雅隆 東京理科大学, 工学部, 助教 (50580221)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 医療事故分析 / ヒューマンファクター / プロセス指向 |
研究実績の概要 |
本研究では,作業方法を改善するために必要な医療事故の分析手法を提案するために,与薬事故に関する手法を実際の事例に適用する.そのために必要となるデータとしてインシデントレポートの収集,分析が必要であり,その収集は完了した.インシデントレポートには,発生に至った経緯やその後の対応,当事者や部門の管理者のコメント,医療安全管理者を含めた対策案が記述されている. 事故報告書を作成するものの,作成するだけになってしまい,事故原因を集計・分析して,実際にどのような事故が多かったかを体系的に評価することは少なかったため,起きた1つの事故に対してのみ対策を施しており,似たような原因の事故が繰り返し再発しているのが現状である. 本研究では,初めに事故を“防止・早期発見ができたはずの事故”と“防止・早期発見は難しかった事故”の2つに大別し,その後,細分化を行い事故の傾向を把握できる原因分析表を作成した.この表を療養型の病院で使用した.看護師は,患者がナースコールを押さず勝手に動き回ることによる事故が多いと認識していた.看護部長を含む看護師4名に確認・修正し,傾向を分析した.その結果,看護師が関わる場面が少ない状況での事故が少なくないことが分かった. 事故の傾向把握を,原因分析表を用いることで捉えることができ,看護師が認識していた事故原因と異なる結果が得ることができた.また,原因分析表を用いることで異なる医療従事者同士の情報共有が不十分な点が明らかになり啓発しやすくなることがわかった. これらの内容は,Asian Network for Qualityでの発表を踏まえ,他施設での適用可能性についての検証における工夫など,他の研究者からのコメントをいただき,準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象とする業務を把握し,業務の違いを把握可能にするために,業務を作業要素に分解した. 次に,過去1年間に発生した医療事故を収集した. 収集したインシデントレポートを調査し,本研究では,尾崎・棟近(2005)が提案した与薬事故のエラーモードとエラー要因の中で該当するものを選択した.既存の分析項目では分析が困難な場合は少なかった. 医療従事者とともに他の事例に適用することで,エラーモード,エラー要因の抽出を試みる準備を実施した.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,課題(2)不遵守により発生する与薬事故の分析手法の改良点の抽出に取り組む.収集した事例から,不遵守によって発生した事故を抽出する.抽出した不遵守事例について,標準行動と不遵守行動を把握する.その後,各事例の不遵守メカニズムを明らかにする. 不遵守行動特性・行動誘発要因・事故誘発要因を整理し,医療業務における不遵守事故の分析手法として整理する.対策立案の観点を新しく抽出した要因に沿って導出する.収集した以外の事例を分析して,適用可能性を検討する.
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