本研究では,作業方法を改善するために必要な医療事故の分析手法を提案するために,与薬事故に関する手法を実際の事例に適用した.インシデントレポートには,発生に至った経緯やその後の対応,当事者や部門の管理者のコメント,医療安全管理者を含めた対策案が記述されている. 当初立案した計画に従い,研究を進めることができた. 昨年度に引き続き,不遵守により発生する与薬事故の分析手法の改良点の抽出に取り組んだ.とくに,検査に関連して収集した事例から,不遵守によって発生した事故を抽出した.抽出した不遵守事例について,標準行動と不遵守行動を把握し,メカニズムの把握に取り組んだ.不遵守行動特性・行動誘発要因・事故誘発要因を整理し,医療業務における不遵守事故の分析手法としてまとめ,対策も立案したところである.これらの手法は,与薬事故と同様に検査業務へも適用可能であることがわかった. 以上は,研究代表者が主体的に進め,協力研究病院の医療従事者との議論を定期的に実施した.これらの成果が一般的であるかどうかを検証するため,これまでに収集した以外の事例を分析して,適用可能性を検討した.多数の業務が存在する中から,手法の検討時にも用いた件数の多い検査業務に着目し,200件以上の事例を提案する方法に基づいて分析した. これらの成果については,国際学会での発表を踏まえ,今後論文化を計画しているところである.今後の課題としては,提案手法を幅広く医療従事者に使ってもらえるようにアプローチをすることである,研究対象病院以外でも研修等で触れていく予定である.
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