脳卒中は、わが国の3大死因の一つであるばかりでなく、「寝たきり」や介護が必要となる原因の第一位である。とりわけ脳梗塞の有病者数は、人口の高齢化とともに今後急速に増加すると予測されており、脳卒中の対策は切迫した課題である。 tPA静注療法は、脳梗塞発症時に血栓を溶かす薬を注射する標準的治療法であり、できうる限り多くの脳梗塞患者がこの治療ができる体制を整える必要がある。しかしtPA静注療法は発症から4.5時間以内でないと使用できないため、専門家不在や体制不備により著しい地域格差が存在していることが明らかとなっている。 これを是正し均てん化を図るためには、脳卒中に特化した遠隔医療(Telestoke)の普及が必須である。地域の環境によらずにTelestroke導入の学習システムを構築することができれば、tPA静注療法が可能となる施設が増え、日本国全体の脳卒中診療体制の診療レベルを向上し、要介護者の減少や高騰する医療費の軽減につながる可能性がある。本研究の目的はTelestroke実践に必要な教育システムを、インターネットを用いて構築することである。 脳卒中超急性期診療における診察方法、必要な情報伝達方法、ネットワーク構築の知識が実際のTelestroke構築には必要であり、これらについて学べるデジタル教材(実際に患者を診るSpoke用と専門医がおり評価を行うHub用)を完成させた。デジタル教材を用いて医療者に学習させ、学習前後のシミュレーション時の診察時間の短縮により教材の学習効果を検証した。なおデジタル教材はhttps://www.youtube.com/watch?v=eqDKs-0BxFQ&t=212sでインターネット環境があればいずれの場所でも閲覧が可能である。教育効果の検証については日本脳卒中学会雑誌に詳細を投稿中である。
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