研究課題/領域番号 |
15K19267
|
研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
平井 一行 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助手 (10580847)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 非結核性抗酸菌 / NTM / 培養による検出 |
研究実績の概要 |
非結核性抗酸菌 (NTM) は主に日和見感染である。NTM は自然界に広く存在しており、ヒト-ヒト感染する結核菌とは異なり、環境から感染する。免疫抵抗減弱者の増加に伴い、NTM の感染者数は世界的に増加傾向にある。治療は抗生剤の投与となるが、効果は小さく除菌が出来ずに難治化する例が多い。その為に、汚染源に合わせた感染対策を行うことが重要である。培養によるNTM検出は確立されておらず、コロニー形成に 1 週間以上を要することから、迅速に結果を得る事ができる遺伝子学的検出が考案され調査に用いられている。しかし、遺伝子学的手法では死菌でも検出される欠点がある。そこで、培養によるNTM検出法の確立を目指した。 シュウ酸を用いた培養による定量検出法の開発において、平成27年度ではパイロット的な実験結果に基づいて、下記の3点を実施することを計画した。 ①結核菌検出法を用いたNTM生残率の比較については、NTM検出に代用される結核菌検出法を比較検討した。NTM生残率は100分の1以下に減少し方法間での有意な差は認められなかったが、シュウ酸法の生残率が高いことがわかった。これは、シュウ酸法での検出開発を支持する結果となった。 ②定量性を高める最適な検体処理条件の検討については、処理方法、シュウ酸濃度と暴露時間、中和方法、培養法を改良した。4点の改良により、NTM標準株を再現性よく検出することができた。シュウ酸濃度に関しては0.1%と0.5%に設定することで、定量性が高くなり、また菌体確保が容易になった。 ③選択性を向上させる為の固形培地に添加する抗生剤の検討については、アムホテリシンBとナリジクス酸を培地に添加することにした。目的ではない真菌とシュウ酸で処理しきれなかった一般細菌の増殖を抑制することが出来た。上記に記述した様に、平成27年度の実施計画は順調に進み、良好な実験結果を得ている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度では、下記3点の検討をパイロット的な実験に基づいて実施し、結果を得た。 ①結核菌検出法を用いたNTM生残率については、NTM検出に頻繁に代用される方法を比較検討した。NaOH法、NALC-NaOH法、シ ュウ酸法で、生残率は100分の1以下に減少し、方法間での有意な差は認められなかった。しかし、シュウ酸法の生残率がある程度には高く、シュウ酸法での検出開発を支持する結果となった。 ②定量性を高める最適な検体処理条件の検討については、処理方法、シュウ酸濃度と暴露時間、中和方法、培養法を改良した。作業時間の短縮から遠心ではなく、濾過法で集菌した。シュウ酸濃度に関しては0.1%と0.5%を併用することで、良好な結果を得た。0.1%処理では、生残率が高く定量性が良いのだが、実サンプルではメチロバクテリウムのコンタミ量が多くなり定量するのに問題となる場合がある。0.5%処理も併用する事により定量性は落ちるが、メチロバクテリウムのコンタミはほぼ無く、菌数測定と菌体確保が容易となった。中和方法に関しては指示薬の変化による方法から、シュウ酸処理量の10倍のリン酸緩衝液を使用方法にすることで、再現性が良くなった。培養方法は、集菌を遠心法よりフィルター濾過法に変更したことにより、7H11培地にフィルターを直接のせて培養することにした。4点の改良により、NTM標準株を再現性よく検出することができた。 ③選択性を向上させる為の抗生剤添加の検討については、アムホテリシンBとナリジクス酸を培地に添加することにした。目的ではない真菌とシュウ酸で処理しきれなかった一般細菌の増殖を抑制することが出来た。上記に記述した様に、平成27年度の実施計画は順調に進み、良好な実験結果を得ている。 また、平成28年度に計画していた実試料測定への応用と評価を前倒しで始めており、研究成果を学会にて報告した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度の計画としては、平成27年度の実施計画に遅れが無いことから、当初の予定通りに下記に2点について行う。 ①NTM 汚染度の迅速把握の為のリアルタイム PCR 法の開発 定量的PCR法に用いられる抗酸菌の属に特異的な遺伝子配列は既に報告されており、検出するプライマー の配列を利用することが出来る。そこで、病院内水系のNTM汚染度の迅速把握の為に抗酸菌属としての定量について、平成27年度に最適化したシュウ酸法を元に、定量的PCR法を比較検討する。標準株を用いた模擬汚染水を使用し、検討を進めていく。 ②新規検出法の実試料測定への応用と評価 平成27年度で最適化した検出法について、病院内水系試料を使い有用性の検討を行う。一般家庭や病院内の水をサンプルとして改良シュウ酸法によるNTMの検出を行い、問題があった場合にはさらに改良し精度の高い検出法へと改変していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、旅費とその他の項目に該当する予算を科研費で支払わなかった為である。 平成27年度当初に申請していた旅費の項目に該当する学会参加に係わる旅費とその他の項目に該当する臨床分離株の運搬費については、他研究費を使用した。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、現在執筆中の論文投稿料、およびそれに係わる参考資料に使用する予定である。 また、平成28年度に請求した助成金に関しては、申請した研究計画に沿って使用する予定である。
|