研究実績の概要 |
横紋筋融解症の発症には、ミオグロビンによる脂質過酸化反応に伴う腎障害が寄与していることが知られているが、そのシグナル経路に関しては未解明な部分が少なくない。現在までに、Glycerol投与後短時間(横紋筋融解症発症直後)における脂質過酸化由来の腎障害に関する検討について詳細な研究報告はされておらず、投与後何時間内に脂質過酸化に至り腎障害を来すのかは知られていない。そこで本研究では、雄の7週齢SDラットに生理食塩水に溶かした50%glycerolを筋肉内投与し投与後1,3時間と短時間での検討を行った。その結果、Glycerol投与1・3時間後の腎臓及び尿の色調は、対照群と比較し著明な変化が認められた。血清BUN,CRK,LDH値は1時間後で有意に低下し、3時間後には1時間後よりも更に低下した。また。腎組織は1時間後よりミオグロビンによる尿細管閉塞が確認された。更に、glycerol投与1時間後より炎症性サイトカインのTNF-α及びIL-6の発現上昇、iNOSの発現上昇、NO産生量の増加も認めたが、脂質酸化損傷マーカーのNε-(Hexanoyl) Lysine(HEL),4-hydroxy-2-nonenal(4-HNE)、Nitrotyrosine(NT)の発現には有意な変化は認められなかった。一方3時間後はNT, HEL,4-HNEの有意な発現上昇を認め、腎機能は1時間後よりも更なる低下を認めた。IL-6及びTNF-α、iNOSの発現は3時間後でも上昇していたが、有意差は認められなかった。以上の結果より、Glycerol投与1時間後では脂質過酸化反応が認められなかったにも関わらず、腎機能障害が生じたことより、ミオグロビンによる脂質過酸化反応は、それが要因となって腎機能障害を引き起こすというよりは、既に発生している腎機能障害の悪化を促す要因となっている可能性が考えられた。
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