研究課題
本年度は大きく分けて、1 薬物依存動物モデル構築のための実験手技の確立および2 薬物依存モデル生体試料からの内因性代謝物(メタボライト)の迅速・簡便分析手法を構築を実施した。1. 薬物依存モデルの構築として、本課題ではオペラント装置を用いた自己投与法を用いることで、薬物依存モデルを構築することを主眼としているが、そのためには頚動脈カニュレーション法を確立することが必須となる。そこで、既にラットを用いた頚動脈カニュレーション法を行い、自己投与モデルを作成されている研究者の元を訪問し、実際の手技を直接ご教授頂いた。さらに、本課題の研究協力者である名古屋大学大学院医学系研究科 林 由美 助教の助力を仰ぎ、現在、マウスの頚動脈カニュレーション法を確立しつつある。さらに、オペラント装置によるプレ条件付けの最適化を実施しており、2016年度には引き続き薬物依存モデル構築のための実験条件の最適化を行う予定である。2. 薬物依存モデルの解析法として、現在、我々の研究室で構築しているガスクロマトグラフ-タンデム質量分析計(GC/MS/MS)を用いたメタボローム解析手法に加えて、より迅速でバイアスのかからない新たなメタボローム解析手法を構築した。本手法ではプローブエレクトロスプレーイオン化法(PESI)と呼ばれる新たなイオン化法をタンデム質量分析計に接続することで、前処理操作無しにメタボライトの分析が可能となった。さらに、ハイスペックの液体クロマトグラフータンデム質量分析計による脂質メディエータープロファイリング手法の条件検討も行い、本課題における解析手法を確立しつつある。
2: おおむね順調に進展している
初年度の課題であった薬物依存モデルの構築に必須であるオペラント装置の準備ならびに実験手技(頚動脈カニュレーションなど)を既に確立しつつあり、今後、それらの条件を最適化すれば薬物依存モデルの構築が可能であると考えられる。さらに、本課題で主たる解析手法として用いるメタボローム解析についても、既存のGC/MS/MSによる解析手法だけでなく、新たなイオン化法であるプローブエレクトロスプレーイオン化法(PESI)とタンデム質量分析計を組み合わせた迅速・簡便メタボローム解析手法を構築していることに加え、高感度質量分析計を用いた脂質メディエータープロファイリング手法についても構築している。以上の結果から、次年度以降の実験がスムーズに展開できるものと考えられ、現時点では、概ね順調に研究が進捗しているといえる。
今後は薬物依存動物モデルを構築するための薬物投与量の最適化を行い、さらに依存モデルの評価法の確立を行う。また、動物モデルの質を高めるためには、頚動脈カニュレーションの手技を今以上に高める必要もあるので、薬物依存モデル構築の方法を最適化していく。さらに、モデル作成と平行して、解析手法の最適化のため、ブランクマウスの解剖を実施し、生体試料の分析条件を検討していく。具体的には新たに開発したプローブエレクトロスプレーイオン化法(PESI)タンデム質量分析計によるインタクト・メタボローム解析法を適用し、前処理不要な分析の最適化を行う。さらに、既存のガスクロマトグラフタンデム質量分析計および高感度タンデム質量分析計による脂質メディエーター解析、さらには免疫染色法による細胞死評価法の最適化も実施する。また、得られた成果は順次、関係・関連学会において発表を行い、国際論文誌への投稿も鋭意進めていく。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 産業財産権 (1件)
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