研究課題/領域番号 |
15K19273
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
田中 直子 香川大学, 医学部, 助教 (60700052)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エネルギー分散型蛍光X線分析 / 射入口 / 射出口 / 鉛 / 異物 / 骨 / 胃内容 / チタン |
研究実績の概要 |
1. 射創における射入口および射出口の鑑別について。 射創がみられた剖検例2例において、それぞれ射入口および射出口の皮膚を採取しホルマリン固定した後、エネルギー分散型蛍光X線装置(EDX)を用いて測定した。射入口の皮膚片より弾丸の成分である鉛、銅、アンチモンのピークが検出された。射出口の皮膚片ではそれらは検出下限以下であった。この結果から、創口の形態的な特徴のみではなく、EDXを用いて皮膚片を測定し、鉛、銅、アンチモンなど弾丸成分の検出程度により射入口と射出口の鑑別ができる可能性が示唆された。 2. 異物の同定について。 外科手術時に消化管壁より採取された細長い異物をEDXで測定した。カルシウム、リン、硫黄の比較的高いピークが検出され、割合はそれぞれ64.3%、22.1%、5.9%であった。これらの元素の構成割合から異物は骨であることが明らかとなった。異物の同定にEDXは有用であると考えられた。 3. 薬物摂取の指標として胃内容測定の有用性について 薬物中毒と診断された剖検例の胃内容を採取し、EDXを用いて点滴法にて測定した。チタンとケイ素の比較的高いピークが得られ、マグネシウムのピークもみられた。また、後日の検査により、数種類の薬物が検出された。これらの錠剤には滑沢剤や遮光剤、付着防止剤などのコーティング剤として酸化チタンやケイ酸、ステアリン酸マグネシウムなどが使用されている。胃内容のEDX分析にてこれらの元素を検出したことから、薬物摂取のスクリーニング検査のひとつとして有用であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
射創における射入口および射出口の鑑別について、射創がみられた剖検例2例において、それぞれ射入口および射出口の皮膚を採取しホルマリン固定した後、エネルギー分散型蛍光X線装置(EDX)を用いて測定した。射入口の皮膚片より弾丸の成分である鉛、銅、アンチモンのピークが検出されたが、射出口の皮膚片ではそれらは検出下限以下であった。この結果から、鉛などの検出程度により射入口と射出口の鑑別ができる可能性が示唆され、学術雑誌に掲載された。 異物の同定について、外科手術時に消化管壁より採取された黒く細長い異物をEDXで測定した。カルシウム、リン、硫黄の比較的高いピークが検出され、これらの元素の構成割合から骨であることが明らかとなった。異物の同定にEDXは有用であると考えられ、学術雑誌に掲載された。 薬物摂取の指標として胃内容測定の有用性について、薬物中毒と診断された剖検例の胃内容を採取し、EDXを用いて点滴法にて測定した。チタンとケイ素の比較的高いピークが得られ、マグネシウムのピークもみられた。これらは錠剤のコーティング剤として使用されている酸化チタンやケイ酸、ステアリン酸マグネシウムに含有されている元素である。この結果から、薬物摂取のスクリーニング検査のひとつとして有用であると考える。学会において報告した。
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今後の研究の推進方策 |
剖検例の胃内容をEDXを用いて測定し、薬物摂取のスクリーニング検査としての有用性をさらに検討する。毒物投与モデル動物を用いて、EDX検査の可能性を検討する。有機リン系農薬、次亜塩素酸溶液、および硫酸銅溶液をモデル動物として実験を行う。モデル毒物をそれぞれラットに投与し、胃内容等を採取しEDXを用いて分析する。さらに、従来から用いられている分光光度法にて試料中の毒物濃度を定量し、EDXの結果と比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
若干の次年度使用額が生じたが、次年度に使用予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬等の購入に使用予定である。
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