研究実績の概要 |
心臓性突然死のうち心筋症は遺伝子異常が起因となり, 心肥大や心拡張を主体とする病態を呈すといわれている. 我々はこれまでに剖検時心筋症と診断された症例について11種類の心サルコメア構成蛋白質をコードする遺伝子およびmtDNA全領域の解析を行い, 多くの症例に遺伝子異常を見出してきた. 本研究では未だ遺伝子変異が確認されていない症例の原因遺伝子探索および複数遺伝子変異と疾患との関連の検討を目的に拡張型心筋症 (DCM)で多くの変異が検出されているラミンA/C遺伝子 (LMNA)について遺伝子変異解析を行った. 対象は肥大型心筋症 (HCM)14例, DCM18例, 心筋症の既往がなく剖検時, 心重量500g以上で求心性肥大が認められた31例および拡張性肥大が認められた17例である. 各症例について血液および心筋からDNAを抽出し, サンガー法にて解析を行ったところ, 一塩基置換および非同義置換が各5ヶ所ずつ検出された. 今回検出された一塩基置換のうちg.37209T>Cおよびg.61613G>CはExon領域内におけるデータベースにない新たな変異であったが, 蛋白質をコードする領域外であった. さらに, 他の3ヶ所についてはIntron内での変異であった. また, 非同義置換のうちExon10で検出されたp.H566=は一塩基多型であったが, 対照群との間に有意差は認められず, 疾患との関連性は低いと考えられた. 今回, 蛋白質異常をもたらすLMNA変異は確認されなかったが, 引き続き他の遺伝子変異解析を行い, 疾患との関連を明らかにしていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はラミンA/C遺伝子であるLMNAについて遺伝子変異解析を行った. 収集された全症例についてLMNAのExon領域全ての遺伝子解析を終了した. 今回, 未だ遺伝子異常を認めていない症例について蛋白質に影響をもたらすLMNA変異を確認することが出来なかったが, 平成28年度も引き続き他の遺伝子変異解析を行い, 疾患との関連について検討していく.
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次年度使用額の使用計画 |
対象症例を随時増やしていく予定であるため, 平成27年度残金については28年度の研究経費と合わせ, 解析に必要なDNAシーケンシングおよびリアルタイムPCR試薬やプライマー合成費用, ピペットチップなどの消耗品等に使用する. また, 研究申請時には北里大学に所属していたが, 平成28年度より鹿児島大学へ異動したため新たに必要な試薬等を購入する予定である.
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