研究課題
アルツハイマー病(AD)の原因物質として知られるアミロイドベータを過剰産生するADモデルマウスに対し、メタボリックシンドロームの構成要素であるインスリン抵抗性を遺伝的に負荷したマウスを作製し、その表現型について解析した。まず、グルコース負荷試験を実施し、インスリン抵抗性に起因する耐糖能異常と血中インスリン濃度上昇が生じていることを確認した。一方、空腹時血糖に異常は見られなかった。次に、行動試験を実施したところ、インスリン抵抗性の負荷により、認知機能の低下を中心とした行動異常が観察された。さらに免疫染色法により脳内のアミロイドベータの蓄積について検討したところ、その蓄積は増加していることが明らかとなった。一方、メタボリックシンドロームの改善効果を有するオメガ3脂肪酸をマウスに投与し、インスリン抵抗性により増悪したAD病態に対する効果を検証した。100mg/kgおよび300mg/kgの用量で、腹腔内に毎日8週間投与した。まず、オメガ3脂肪酸の投与が、インスリン抵抗性に起因する血中インスリン濃度上昇を抑制することを確認した。さらに、オメガ3脂肪酸の投与は、インスリン抵抗性負荷ADモデルマウスの行動異常を改善した。以上のことより、インスリン抵抗性を調節することで、AD病態の症状を重篤度が変化することが示唆される。今後、インスリン抵抗性がアミロイドベータの蓄積を進行させるメカニズムについて検討する。
2: おおむね順調に進展している
インスリン抵抗性によるアルツハイマー病の病態増悪を研究期間の早期に捉えることができた。また、その増悪を改善するメタボリックシンドローム改善薬をすでに見出している。今後、そのメカニズムについて検討する。
インスリン抵抗性がアルツハイマー病を増悪するメカニズムについて解析する。またオメガ3脂肪酸がAD病態を増悪するメカニズムについて解析する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件)
Oxidative Medicine and Cellular Longevity
巻: 2015 ページ: 391075
10.1155/2015/391075
巻: 2015 ページ: 238914
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基礎老化研究
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