研究課題
これまで、インスリン抵抗性ADモデルマウス (mIR-KI, NLGF)が、重篤な精神症状を呈することを明らかにしてきた。さらにメタボリックシンドロームの改善効果を有するオメガ3脂肪酸を100 mg/kgおよび300 mg/kgの用量でマウスに経口投与することで、その精神症状は改善した。当該年度では、用量を300 mg/kgおよび1500 mg/kgに設定し、以前見られた精神症状改善効果の再現性について確認した。この用量設定では、300 mg/kgでは改善効果が見られたが、1500 mg/kgではその効果が減弱していた。前回の結果を考慮すると、300 mg/kgが至適用量であることが示唆される。次にこの改善効果のメカニズムを明らかにするため、オメガ3脂肪酸の抗炎症作用に着目し、脳内免疫担当細胞であるミクログリアに対する作用について検討した。炎症起因物質LPSを初代培養ミクログリアに処置することで炎症反応を誘導し、オメガ3脂肪酸の作用について解析した。オメガ3脂肪酸であるDHAとEPAを比較したところ、DHAの方がEPAに比べて強力な炎症抑制作用を示すことが明らかとなった。DHAの炎症抑制作用のメカニズムについて明らかにするため、DHAが長鎖脂肪酸であることに着目し、長鎖脂肪酸受容体であるGPR40およびGPR120のアゴニストを培養ミクログリアに処置したところ、炎症反応を抑制することができなかった。このことより、DHAはGPR40およびGPR120以外の作用を介して抗炎症作用を発現していることが示唆される。今後は、脂肪酸核内受容体などに着目して研究を進める。
1: 当初の計画以上に進展している
mIR-KI, NLGFが示す精神症状に対するオメガ3脂肪酸の改善効果の再現性を確認することができた。さらにそのメカニズムについて、培養ミクログリアに対するのDHAの強力な炎症抑制効果を見出すことでできた。今後は、in vivoにおけるオメガ3脂肪酸の作用について、炎症抑制効果に着目し解析する。研究計画の進展は順調であり、課題遂行の見通しは非常に明るい。
mIR-KI, NLGFの脳内炎症反応に対するオメガ3脂肪酸の作用を解析することで、ミクログリアの関与について検討する。また、ミクログリアによる老人斑の貪食作用についても解析する。これに加え、培養ミクログリアを用い、DHAの抗炎症作用のメカニズムについて解析を行う。
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Scientific Reports
巻: 6 ページ: 29038
10.1038/srep29038
http://www.m.chiba-u.jp/class/clin-cellbiol/research/contents/increasing_age.html#jump1