研究課題
高齢者における鎮静剤使用下の気管支鏡検査の安全性,有用性を明らかにするために電子カルテ情報を用いた後ろ向き研究を行った.高齢者の問題点として,多くの併存疾患,加齢に伴う身体・認知機能の低下などがあり気管支鏡の合併症につながりうる.2012年4月から2015年10月の間に当院で気管支鏡を施行された80歳以上の患者107件を対象とした.年齢は80-89歳(中央値82歳),性別は男性77名(72%),Performance Statusは0-1が91例,2-3が16例であった.併存疾患はCOPD35例,冠動脈疾患21例,糖尿病19例,間質性肺炎7例,認知症6例であった.内容は鉗子生検78,EBUS-TBNA19例,BAL8例,EWS3例,異物除去2例であった.ミダゾラムを全例に用い投与量は1.5-8mg(平均値3.5mg).悪性腫瘍75例中59例で気管支鏡により確定診断が得られ,原発性肺癌50例,リンパ腫6例,転移性肺腫瘍3例であった.検査合併症として肺炎が4例,過鎮静によるフルマニゼル使用が2例,CO2ナルコーシス1例,気胸が1例,不整脈が1例であった.重度の出血や遷延する低酸素血症はみられなかった.合併症による死亡や重篤な後遺症の発生はなかったが,再入院が1例,ICU入室が1例,入院期間の延長が3例でみられた.80歳以上の高齢者に対する気管支鏡は多くの症例において安全かつ有用であるが,併存疾患も多く合併症には注意が必要であると考えられた.
3: やや遅れている
後ろ向き観察研究のデータ集積と前向き研究の立案・プロトコール作成に時間を要しており,若干の遅れがみられる.
現在前向き登録による遺伝子多型を考慮した鎮静剤使用下の気管支鏡についての臨床試験を計画している.プロトコール作成,IRB承認を経て実際の患者登録へ進む予定である.
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巻: 印刷中 ページ: 印刷中
doi:10.1016/j.resinv.2015.11.006
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