研究課題/領域番号 |
15K19283
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三河 拓己 京都大学, 医学研究科, 教務補佐員 (90608051)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 解糖系酵素 / 発がん / DNA損傷修復 |
研究実績の概要 |
我々は「代謝からの癌予防」を最終目標とし、なかでも解糖系酵素の一つPGAMと発癌の関係に着目し研究を進めている。以前よりPGAMを過剰発現したマウス胎生繊維芽細胞において、細胞老化がバイパスされることを見出しており、さらにはPGAMトランスジェニックマウスにおいて、化学皮膚発癌実験による腫瘍形成が亢進する可能性に気が付いていた。そこで本年度はPGAMと発癌の関連について詳細なより検討を行い、化学発癌誘導による皮膚腫瘍形成実験において、出現した腫瘍の頻度やサイズ、および病理診断からPGAMトランスジェニックマウスが、野生型マウスに比較して、腫瘍を形成しやすいこと、さらに、このマウスでは一部の腫瘍が悪性化していることを突き止めた。そこで発癌性を亢進する分子メカニズムとして「PGAMとDNA損傷修復シグナルとの連関」を予想し、マウスへのIR照射時に誘導される下流因子の発現変化などから検討を進めている。特にPGAMと結合する因子Xを重点に解析中である。 反対にPGAMの発現減少による影響を検討するため、PGAMノックアウトマウスについての解析を行っている。全身ホモノックアウトマウスは致死であったため、ヘテロノックアウトマウスを用いて解析を進めており、PGAMの発現減少を代謝的な側面および発癌やストレス応答としての側面の双方から影響について現在解析中である。 今後さらに解析を進め、PGAMをターゲットとした新規の抗癌治療の開発に貢献したいと思っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では解糖系酵素PGAMの発がんにおけるインパクトが最も重要なポイントであり、この点を当該年度に明らかにできたことは研究の進行上非常に大きかった。また、PGAMトランスジェニック、PGAMノックアウトマウスそれぞれの解析も順調に進行しており、PGAMの異常がマウス個体に及ぼす影響についての知見が集まりつつある。さらにそれぞれのマウスより採取した胎生繊維芽細胞(MEF)を用い、結合因子Xとの機能的な連関について解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に野生型PGAMで観察された現象について、ヒトで発見された活性喪失した変異型PGAMで同様の実験を行い、PGAM酵素活性の重要性を検討するとともに、ヒトの疾病との関係を調べる。さらに結合因子Xとの機能的連関について検討し、PGAMがDNA損傷シグナルにいかなる影響をもたらすかを明らかにし、最終的には本研究をPGAM異常の生理機能への影響を分子レベルで説明できるものにしたい。
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